オルゴールが鳴る夜、何度でもきみの元へ

突風が家の壁を叩き、みしみしと嫌な音を立てる。

その日は台風が、朝から町を直撃していた。
灰色の海は怒った獣のようにうねり、大きな波が防波堤にぶつかるたび、白いしぶきが何階建てもの建物みたいに高くはね上がる。

「すごい……まるで海が怒ってるみたい」
窓に手をつきながら、私は小さくつぶやいた。

——あ。
一度目も確か同じことを言った。

思い出した自分に、思わず苦笑いがこぼれる。

その日、学校は休校になった。

「高潮に警戒してください」
「不要不急の外出は控えてください」
リビングに降りると、父と母がのんびりとニュースを眺めていた。

「すごいな。海の近くの台風って迫力あるなぁ」
父が感心したように言い、母が少し眉を下げる。

「ちょっと怖いわね……」

母の視線を追いかけて窓の外を見ると、雨粒がガラスを割ってしまいそうなほど強く叩きつけ、絶え間なく音を立てていた。

外では看板がばたんと倒れ、街路樹が根元からしなるように揺れている。

私は、何も起きないって分かってる。
それでも、海が暴れる様子を見るのはやっぱり怖かった。

——ピンポーン。

突然響いたチャイムの音に、両親が驚いたように顔を見合わせる。

「こんな雨の中、誰かしら……」
「俺が出るよ」
二人そろって立ち上がり、玄関へ向かう。

私はその後ろを、こっそり追いかけた。

ドアが開いた瞬間、強い風がリビングまで吹き込んできた。

「こんにちは〜。すごい雨ですね」

両親の隙間から玄関をのぞくと、カッパの水が落ちないようにうまく丸めた翼と目が合った。

「汐莉、大丈夫か!」
いつもより少し大きな、明るい声。

その声を聞いただけで、胸の奥があたたかくなる。

「いらっしゃい、翼」

引っ越してきて初めての台風に、心配して来てくれた海原一家を、私たち家族は部屋へと招き入れた。