オルゴールが鳴る夜、何度でもきみの元へ

しばらくして、通学路の分かれ道にさしかかる。

——海、行こうかな。

朝来た方と違う道を選んだ先に、長い防波堤が見えた。
夕日を受けた海は眩しいくらいに赤く光っている。

家からすぐ近くの防波堤は、引っ越してからすぐにお父さんとお母さんと三人で訪れた。

真昼だったその日の海とは表情を変えた、夕方の海に目を奪われる。

そして、私は防波堤に腰を下ろし、カバンから絵日記を取り出したのだ。

絵に夢中になっていた私を、背後から聞こえた爽やかな声が引き戻した。

「あれ? 転校生の……」
驚いて振り返ると、夕陽を浴びた制服姿の男の子が立っていた。

「水城……汐莉、だっけ?」
「……うん」

小さく返すと、彼はにっと笑った。

「俺、海原翼。ここの防波堤、よく来るんだ」

せっかく見つけたひとりで過ごせる場所が、自分だけの場所ではなかったことを知って、なぜか少しだけ惜しく感じた。

「……そうなんだ」

夕陽に照らされて茶色っぽく光る短い髪は海風でふわふわと揺れていて、日に焼けた頬が健康的な男の子。

「家、このへん?」
「うん。あっちの方」
「え?じゃあ近所じゃん」

そう言って、海原くんはためらいもなく私の隣に腰をおろした。
急に近づいた距離に、私は思わず体をこわばらせる。

「近所なら教室でも声かけてみたらよかったな」
「えっ……同じクラスなの?」
「そうだよ。これからよろしくな」

潮風に混じって聞こえる海原くんの声は、私の知っている男の子とはちょっと違って、落ち着いていて柔らかい声色だった。

「うん、よろしくね」
私は、戸惑いながら彼を見る。

にかっと笑う彼につられて、ほんの少しだけ、口角が自然に上がるのを感じた。

——優しい雰囲気の人だな。

海の綺麗な防波堤で出会ったからか、なんだかいつもより心が強ばっていない気がした。