オルゴールが鳴る夜、何度でもきみの元へ

防波堤に腰を下ろすと、夕陽が海面を赤く引きのばしていた。

翼は石の上に座り、靴先で小石を弾きながら、いつもの調子で話し出す。

「今日、健太マジで張り切ってたよな〜」
他愛ない話と、いつも通りの防波堤の景色。

その横顔を、私はしばらく黙って見つめてしまった。

——ずっと、見ていたかった。

今日の夜には消えてしまう、この時間を。
翼が、ここにいる日常を。

「なに、どうした?」
気づけば、翼が眉を下げてこちらを覗き込んでいた。

返事をしていなかったことに気付いて、はっとする。

——違う。

私は、ただ一緒にいるために来たんじゃない。
翼のことを、ちゃんと知りたくて、ここに来たんだ。

けれど、そう思えば思うほど、口の中が乾いていく。

うなずくだけの時間がまた少し続いて、会話がふと途切れたその隙間に、私はようやく息を吸った。