オルゴールが鳴る夜、何度でもきみの元へ

結局、みんながいる中では、そんな話を切り出せる空気にはならなくて。

気づけば、解散の時間まで普通に潮干狩りを楽しんでしまっていて、バケツいっぱいの貝を持ち上げて、私は少しだけ困る。

お母さんはきっと喜ぶだろうけど、私はどうせ……これを食べる頃には、もういない。

「じゃ、また明日な〜」
先生の声とともに、クラスメイトたちがそれぞれの方向へ散っていく。

翼もいつもの調子で手を振っていた。

けれどそのあと、ふらっと輪を抜けて、ひとりで歩き出す。

にぎやかな声はまだ続いているのに、最初からそこにいなかったみたいに、自然に。

クラスの人気者なのに、姿を消すのはすごく上手で、誰もその様子には気付いていないみたいだった。

私は慌ててその背中を追いかけて、砂浜から上がる。
スタスタと歩道を歩いていく彼を呼び止めた。

「待って、翼!ちょっと寄り道しない?」
自分から誘ったのは、初めてだった。

振り返った翼は、一瞬きょとんとした顔を見せて、それからいつものように笑った。

「いいよ。どこ行く?」
突然聞かれて、頭が真っ白になる。

……考えていなかった。

ただ、翼を呼び止めることに必死で。

「えっと……」
言葉がうまく出てこない私を、翼はじっと見つめていた。

「……防波堤」
ようやく絞り出した言葉に、翼は肩をすくめて笑う。

「確かに。俺らはそこだよなー」
すぐに歩き始める背中を追いかけながら、ほっと息をついた。

誘えた。
ドキドキと緊張の余韻を残す左胸にそっと手を当てる。

でも、どうしよう……。
このあとは、何を、どう聞けばいいんだろう。

聞きたいことは山ほどあるのに、何から触れればいいのか分からない。

私は、防波堤に着くまでの間も、必死に言葉を探していた。