オルゴールが鳴る夜、何度でもきみの元へ

既視感のある砂浜に降り立つと、クラスメイトたちは一斉に広がっていった。

「よーし取るぞ!」
「負けないからな!」

あの日と同じ声。
あの日と同じ、眩しい海。

私は、ぎゅっと手持ちの袋を握りしめて、少し先にいた三人のもとへ歩み寄る。

「健太より大きいの絶対見つける!」
「うるせーな、数で勝負だろ!」

軽口が飛び交ういつもの空間。
そしてそのやりとりを、呆れたように見ながら笑う翼がそこにいる。

私はその横顔をこっそりと見つめた。
今日はずっと、この笑顔から目を離さないと心に決めて。

「わっ」
「ばか、大丈夫か?」
美咲の足がぬかるみに取られ、翼がさっと手を伸ばす。

離れた場所から見えたその光景にも、私の胸はざわつかなかった。

夏祭りの日。
『私、健太と付き合ってる』
いたずらっぽく笑った美咲の顔が浮かぶ。

前回胸に広がった、あの子どもみたいな嫉妬は、今はどこにも見当たらない。

「こっちのほう行こうぜ!」
健太の誘いに立ち上がり、また四人で移動をした。

そしてやっと、その時だった。

潮干狩りに夢中になって、みんなの視線が外れたその一瞬、翼の笑顔が、すっと消えた。
ひとりだけ潮風の方へ目を向け、遠い海を見つめている。

……翼って、あんな表情するんだ。

あまりの珍しさにそう思ったあと、胸がひやりと静まる。

それは、一度目の私が、確かに気づかなかった表情だった。