オルゴールが鳴る夜、何度でもきみの元へ

「こっちだ! 早く!」

誰かの声にうながされ、翼のお父さんは翼が横たわる担架のそばへ歩み寄る。

赤い回転灯の光が、無言の親子を交互に照らしていた。

涙を流すことも、取り乱すこともなく。
言葉を失ったまま、まるで時間が止まったようにじっと見つめている。

「大ちゃん、可哀想だね……」
「奥さんも亡くしたのに、心配だよな」

人混みのどこかから耳に届いた言葉に、私ははっと顔を上げた。

——奥さんも。

翼のお父さんは、このあたりでは名の知れた漁師だと聞いていた。

近所付き合いの中で、わざわざ引っ越してすぐの我が家に顔を出してくれたこともある。

両親は「大ちゃんは頼れるし、親切な人だ」とよく話していた。

大きな声で笑って、日焼けした手で私の頭を撫でてくれたこともあって。

翼のお父さんだなあ、と、その明るさに納得していた。

けれど確かに、お母さんの話を、私は一度も聞いたことがない。

翼は、あの明るい笑顔の裏で、自分から海に飛び込むほどの何かを抱えていた。

それは、家族の何かだったのかもしれない。

だけど、事故じゃなかったと分かったとして、どうすれば、あの笑顔を守れることになるんだろう。

答えはどこにも見つからず、胸の奥だけがずしりと重く沈んでいく。

自分がどこにいるのかも分からないまま、視界がふわりと揺れて——

次に気づいたとき、私は涙を流しながら、自分の部屋の天井を見つめていた。