オルゴールが鳴る夜、何度でもきみの元へ

「なんで……、翼っ、なんでよ……」

今回は、人だかりの後ろじゃなく、その輪の中心で、私は力なく座り込んでいた。

翼は、私の目の前で、自分の足で、防波堤へ向かった。

……ずっと、止められなかったのは、事故じゃなかったからだ。

翼は、自分で、選んだんだ。

希望を感じていた胸の奥が、音を立てて崩れていく。

今まで私が見てきたのは、明るくて、まぶしいくらいの笑顔を見せる翼。

そんな翼が、自分から海に飛び込んでしまったのか。
想像が、まったく追いつかない。

「……私……」

翼のことを好きだなんて思ってたくせに、何も知らなかった。

握った拳が、小さく震える。

——もっと、ちゃんと見ていれば、気づけたことがあったんじゃないか。

後悔ばかりが、胸の中でぶつかり合って、涙で視界がにじんでいく。

海風が吹き抜けても、頬を伝う涙は止まらなかった。

そのとき、ざわめく人だかりの向こうから、ひときわ大きな影が現れた。

「大輔……」
「あぁ、海原さん……」

道を開けるように、目の前の人だかりがばらけていく。

漁師仲間に肩を押されるようにして、防波堤へ駆けつけたのは、翼のお父さんだった。