オルゴールが鳴る夜、何度でもきみの元へ

照りつける日差しの下、蝉の声が絶え間なく降り注ぐ。

じっとしていられるわけもなく、私は昼過ぎから防波堤の近くに立ち続けていた。

防波堤と翼の家をつなぐ、この細い道。

——翼が家から防波堤へ向かうなら、きっとここを通る。

そう信じて、私はお昼からここにいる。

時間がゆっくりと夕方へ傾き、祭りへ向かう浴衣姿の人たちが、少しずつ増えていった。

……大丈夫。今回は、絶対。

日が暮れて長く伸びた影が足元に落ちたそのとき——。
夕暮れの光の中に、待ち焦がれたその姿が現れた。

張りつめていた胸の糸が、ふっとほどける。
ずっと押し込めていた不安が、少しだけ和らいだ。

……よかった。ちゃんと会えた。

声をかける前に、安堵の息がこぼれる。

けれど、近づいてくる翼の表情が見えた途端、胸の奥がざわりと波立った。

翼の顔にいつもの笑顔がない。

それどころか、俯きがちの表情は固く強張って、何も写していないように見えた。

気付かないはずがない距離なのに、彼の視線は、どこにも焦点が合っていないみたいで、そのまま、私の横を通り過ぎようとする。

「……翼?」
慌てて呼び止めるけれど、彼の足は止まらない。

潮風が強く吹き抜けて、背筋がひやりとした。

「翼!」
少し大きな声で呼ぶと、ようやく彼は立ち止まり、ゆっくりと振り返った。

「……汐莉」
うっすらと浮かべた笑みは形だけで、目は笑っていない。

ざわざわと感じていた違和感が、はっきりとした不安に変わる。

それでも私は、勇気をかき集めて一歩踏み出した。