オルゴールが鳴る夜、何度でもきみの元へ

そして、翼との約束の時間よりずっと前。
落ち着かない気持ちを抱えたまま、私は家を飛び出した。

夕方の道は、少しずつ祭りの色に染まりはじめている。
遠くからは太鼓の音がかすかに聞こえてきた。

けれど、私の心臓は別の理由で速く打っていた。

目的地である、翼の家の前にたどり着く。

時刻は17:30。
集合の約束の15分前だった。

ここに翼がいれば——きっと世界は変わる。

期待を胸にインターホンを鳴らしたけれど、玄関からは、物音ひとつ返ってこなかった。

……どうして? 約束したのに。

私は無意識に、胸元の服をぎゅっと握りしめた。
呼吸が浅くなるのが分かる。

——大丈夫。まだ時間前。

そう自分に言い聞かせて、もう一度チャイムを押した。

それでも玄関の灯りはつかないまま、時間だけがじわじわと進んでいく。

何度スマホを見ても、翼からの連絡はない。

胸の奥が、すうっと冷えていった、そのとき。
近くを走っていた町内会のおじさんの声が耳に飛び込んだ。

「防波堤で、人が落ちたらしい!人手を呼べ!」

——心臓が、一気に跳ね上がった。

「……っ!」
頭が真っ白になり、気づいたときには足が地面を蹴っていた。