オルゴールが鳴る夜、何度でもきみの元へ

鳴らなかったオルゴールにため息をついて、私は宿題を開いていた。

夏休みの前半でほとんど終わらせていたはずなのに、お祭りの日からはぴたりと止まった進捗にため息が落ちる。

何も考えないように、課題に熱中した数時間。
窓の外が、ゆっくりとオレンジ色に染まりはじめる感覚に、私は大きく伸びをした。

「……疲れた」
机の端に置いてあった絵日記が目に止まる。

真っ黒に塗りつぶした日から、5ページ。
空白が続いた時間に、私はやっと、鉛筆をとった。

2026.8.23
今日の日付を書いたページに、昨日の不思議な夢を描いていく。

駅前のアーケードに立つ自分の姿と提灯の明かりが灯る街並みを絵にした。

……やっぱ夢だったんだよね。

イラストにすることで、そう自分を納得させて、そっと絵日記を閉じた。

夜になり、部屋の電気を落とすと苦手な静けさが広がった。

目を閉じれば、すぐに真っ赤な光景が蘇る。
あの日から、夜はどうしても苦手だった。

私は目を開けたままベッドに横になる。

——チリ。
どれくらいかぼんやりとしているうちに、小さな音が闇の中で鳴った。

ハッとして上半身を起こすと、月明かりに照らされた机の上のオルゴールが目に入る。

「……今、音……?」
手を伸ばして、オルゴールを手のひらに乗せた。

緊張するように、鼓動が、どくどくと早まる。

……チ。
また、ほんのわずかに音が鳴った。

まるで夜になるのを待っていたみたいに、ゆっくりと戻っていくゼンマイ。

「もしかして……」
言葉は最後まで続かなかった。

手のひらに感じる小さな振動に、瞼がゆっくりと閉じていく。