オルゴールが鳴る夜、何度でもきみの元へ

約束の18時が近づくまで、私は部屋の中を落ち着かなく彷徨っていた。

今朝、確かに翼は笑っていた。
地域の小学生に囲まれて、太陽みたいに元気だった。

それなのに——夜には防波堤で亡くなってしまう。

知っている映像に、胸がぎゅっと縮む。

——それなら、防波堤を通らなければ、きっと……。

深く息を吸い込み、震える指で、文字を打ち込む。

【今日、駅前のアーケードで集合しない?】

送信ボタンを押した瞬間、心臓が大きく跳ねた。

翼の家から駅前に向かうには、防波堤とは逆方向に進むことになる。

お祭りの会場には遠回りだけど、これできっと助けられる、はずだ。

スマホを握りしめたまま、画面を見つめた。
やけに長く感じる数分間の後、画面が光って短い返事が届く。

【OK! またあとで】
たった一行なのに、胸の奥がじんわりと熱くなった。

小さな希望が、本物の光のようにきらめいた瞬間だった。

覚悟を固めるように何度か深呼吸をして、クローゼットを開く。

いちばん手前にかかっていたのは、真っ白なワンピース。

お祭り前日の私が、時間をかけて悩んで決めた一着だったと思い出した。

動きやすいデニムと白のブラウスを引き抜く。
守りたいものがある今日は、動けるほうを選んだ方がいい。

ハンガーに残されたワンピースが、静かに揺れる。

翼との、初めての休日。
胸を弾ませながら選んだあの服を着るのは、奇跡が起きてからでいい。