オルゴールが鳴る夜、何度でもきみの元へ

「汐莉! 今日、18時な!」

聞き覚えのあるその言葉が、今にも崩れ落ちそうだった膝に力を込める。

——18時、夏祭り?

私は、思い当たる記憶を頼りに、勢いよくスマホを掴んだ。

表示された日付を見た瞬間、再び息が止まる。

2026.8.16

表示された日付は、紛れも無い夏祭りの当日。
翼がいなくなった日だった。

翼は明るく手を振って、健太を追いかけるように公園に走っていった。
私はゆっくりと窓から離れ、尻餅をつくようにベッドに座り込む。

これは夢?どういうこと?

困惑の中、机の上に置かれた小さな木箱が視界に止まった。

記憶の中の8月16日とはっきり違うものがひとつ。
昨日置きっぱなしにしたオルゴールに、震える手でそっと触れた。

固まって、もう戻らなかったはずのゼンマイに、指先をかける。

——チリ。
かすかな音を立てて、それは、あっけないほど簡単に回った。

あんなに目いっぱい巻いたはずなのに。
知らない間に、ゼンマイがゆるく戻っていたのだ。

——『あなたが、助けに行けばいい』

オルゴールをくれたお姉さんの声が、はっきりと蘇った。

2026.8.16
何度見ても、変わらない日付。

ただの夢かもしれない。

でも——もし。
もし、この日をやり直せるなら。

止められるのかな。翼の事故を。

胸の奥に、小さな芽みたいな希望が、ふくらむ。

さっき見た、窓の外で笑っている翼を、もう一度思い出す。

——あの笑顔が、きっと、最後に見た翼の姿だった。

いやだ、最後になんて、したくない。