オルゴールが鳴る夜、何度でもきみの元へ

駆け下りた先には、ちょうど夕日が真正面に沈んでいく、防波堤の景色が広がっていた。

何度も、絵日記に描いた。
春も、梅雨のころも、夏になってからも。

一番最初に描いた日は、翼も、隣にいて——。

『水城汐莉、だっけ?』
懐かしい翼の声が頭の中に響く。

夕焼けを背に立っていた、あの姿。
初めて会った日の光景が、今の景色に重なっていく。

私は、思い出に引き寄せられるみたいに、もう一歩足を進めた。

けれど、その瞬間。

視界が、一気に赤く染まった。

救急車の光に照らされて、真っ赤に浮かび上がる、防波堤。

あの日の記憶が、津波みたいに押し寄せてくる。

私は、思わずその場にしゃがみ込んだ。

——行けない。

ふたりで並んだ、あの場所へ。
どうしても、近づくことができない。

視界が、ゆっくりと滲んでいく。
苦しくなる呼吸に、私は何度も深呼吸を繰り返した。

——もう、つらい。
全部、嘘だって言ってよ。

私は、膝の上で拳を握りしめた。

翼に会いたい。
こんなの、信じたくないよ。

——お願い。
私は何を捨てたっていいから。
全部、なかったことにしてよ。

翼を、助けてよ。

「……お願い……」
そう、声に出した瞬間。

頭上に、気配を感じた。