オルゴールが鳴る夜、何度でもきみの元へ

泣き疲れて眠ってしまったはずなのに、私は、ほんの一時間ほどで目を覚ましてしまった。

時刻はまだ夜の11時。
目を閉じても、眠りは戻ってこない。

私は小さなランプを灯して、机に手を伸ばした。

真っ黒に塗りつぶした一枚をそっと閉じ、ペラペラとページをめくる。

絵日記に、彼が初めて登場したのは、夕焼けの防波堤で、並んで座る二人の後ろ姿を描いたイラストだった。

2026.4.15
転校初日。
心を閉ざしていた私に、話しかけてくれた翼。

今思えば、このときから、不思議と翼の隣は居心地がよかった。

その日を境に、景色ばかりだった私の絵日記には、少しずつ人が増えていった。

美咲や健太と一緒に歩く、廊下のイラスト。
並んで食べた、お弁当。

戸惑っている時間のほうが大きく感じられていたけれど、なんでもない日常がちゃんと楽しかったのだと今になって思う。

台風が過ぎた後の海岸で、流れ着いたゴミを集める三人の背中。
空はまだ深い灰色だったはずなのに、絵の中は明るい薄灰色で塗られている。

その理由を、描いた自分自身が一番よく知っているのだ。

ページをめくっても、めくっても。

そこには、翼がいた。
その隣に、美咲がいて、健太がいて。

そして——私も、いた。