オルゴールが鳴る夜、何度でもきみの元へ

満開に咲く花火を背に、必死に走り続けていた。

着慣れないワンピースが足に纏わりついて、走りづらい。

「……違う、絶対に、違う」
不安に揺れ続ける心を、なんとか誤魔化す。

どれだけ息が切れても、横腹が痛んでも、足は止まろうとしなかった。

「翼。無事でいて……」

角を曲がった先で、赤い光がちかちかと瞬いていた。
近づけば近づくほど、大好きな景色が真っ赤に塗り替えられていくようで、身体が震える。

見慣れているはずの防波堤は、いつもとすっかり表情が違っていた。

いつもなら、人影なんてほとんどない場所。
静かで、落ち着く場所だったはずなのに……。

点滅する赤いランプを取り囲むように集まる大勢の後ろ姿に、私の足はやっと止まった。

「……っ」
肩で息をしながら、その先を必死に見つめる。

「汐莉、速いよ……!」
「何があったんだ……?」

追いかけてきていた美咲と健太が、私の後ろで足を止めたけれど、振り返る余裕なんてなかった。

ここまでずっと走ってきたくせに、震えてこれ以上前には進んでくれない足。

ただ、必死の思いで人だかりの先を見つめると、ほんの一瞬だけ人が避けて、地面に置かれたものが見えた。

その瞬間に、私の体は凍りつく。

側面が砂で汚れたスニーカー。
左右の長さが揃っていない不恰好な結び目に、息が止まった。