オルゴールが鳴る夜、何度でもきみの元へ

そのとき、教室の後ろのドアががらりと開いた。
振り返ると、翼が戻ってきたところだった。

「おー、どこ行ってたんだよ!」
健太が野次を飛ばし、翼は一瞬だけ小さく視線を逸らす。

「先生に呼ばれてた」
その横顔は、なんとなくいつもより暗い。

私の視線に気づいたのか、翼はいつもの調子でにっと笑った。

「なに見てんだよ!」
そう言いながら歩いてきた彼に、一瞬暗くみえた表情は全く残っていなかった。

「翼も見てよ!懐かしいでしょ」
美咲が、私の手の中にあるスマホを指差し、翼の顔がぐっと近くに寄る。

ふわりと、制服越しに感じる体温に、胸がほんの少し跳ねた。

「あー、懐かしい。今年ももうすぐだな」

頭上から聞こえる軽い声に、きゅっと唇を結ぶ。

美咲も健太も優しい。
けれど、翼の隣は、どこか特別に居心地がよかった。

「地元のお祭りで、毎年三人で行ってるんだよ。今年は汐莉も行こうぜ」
そんな説明と一緒に、さらっと誘われた私は、驚いて目を丸くする。

翼はいつもの爽やかな笑顔でこちらを見ていた。

——当たり前に、入れてくれるんだ。

確かに、ふわっと温かくなる心の奥を感じたのに、私は反射的に首を左右に振っていた。

「いいよ。私は……」
断る私に、三人は驚きを隠さずにこちらを見つめる。

「え、なんで?用事あった……?」
不安そうな美咲の声に申し訳なさがじわりと心を締め付けた。

でも——。

どうしていいか分からなくなって、私は勢いよく立ち上がった。

「私は、いいから!」
それだけ伝えて、教室を飛び出す。

——どうしよう。変に思われたかも。

廊下に出た途端、大きな後悔が胸の奥を襲う。

だけど、いつも三人でいるその輪の中に自分が並ぶ姿が、どうしても想像できなかった。

それに怖かった。

必要以上に近づいて、大切になったその瞬間に、また、失ってしまうことが。