オルゴールが鳴る夜、何度でもきみの元へ

お通夜を終え、家に帰った私はそのまま自室へと閉じこもった。

扉を閉めると、お通夜の会場で見た光景が、遅れて頭の中に浮かんでくる。

白い棺に入った彼の姿は、最後までまともに見られなかった。

私は、隣に座る両親の動きをなぞるみたいに、ただ、決められた動作を真似していただけ。
そうしていないと、気持ちが溢れてどうにかなってしまいそうだった。

机の上の絵日記が目に入り、落ち着こうと必死だった胸が大きく揺れる。

昨日の、日付さえ書き込まれていない空白のページ。
毎日、当たり前みたいに続いていた日課に、ぽっかりと穴が空いている。

私は、ふらふらと机に腰を下ろし、震える手で鉛筆を手に取った。

空白の次のページに、日付を書き込む。

2026.8.17
数字を書いた途端に、今日の記憶が勢いよく蘇った。

線香の香り。
寄り添うように座る美咲と健太。
差し出された少しぬるいお茶。
近所の人と話しながら、何度もこちらを気にしていた両親。

そして——。
ぽた、と。それから、もう一つ。

両目から落ちた雫が、白いページにふたつの染みを作った。

その跡を見た途端、堪えていたものが溢れ出す。

「……っ」
喉の奥から声にならない音が漏れ、気づけば涙が止まらなくなっていた。

私は、衝動的に黒の色鉛筆を掴み、乱暴に線を引く。

ぐしゃぐしゃと、何度も、何度も。

「……っ、いやだ、いやだよ……っ」

どこに向ければいいのか分からない感情を、押し出すみたいに、黒く、黒く、塗りつぶす。

「……なんで……翼の、嘘つき……っ」

胸が焼けるみたいに痛くて、それでも、止められなかった。

強く握りしめていた手が、じん、と痛みを訴えて、ようやく私は鉛筆を置く。

視線を落とすと、ページは濃く深く、真っ黒に染まっていた。

「……つばさ。つばさああああああ……」
私は、その場に崩れ落ちて、声をあげて泣いた。

「うわああああああん」

扉が勢いよく開かれる音がして、両親が慌てて駆け寄ってくる。

温かい腕に抱きしめられても、私は、ただ、泣き続けることしかできなかった。