オルゴールが鳴る夜、何度でもきみの元へ

教科書を取り出していた翼が立ち上がり、いつの間にか、私の席のまわりに集まった三人は、こちらを見て笑った。

「で、音楽室、知ってんの?」
固まっている私に、翼が尋ねる。

「あ、えと、分からない……から、その……」

——誰かの後ろについていこうと思っていました。
なんて、そんなこと言えるわけもなくて、私は途中で言葉を詰まらせる。

「だよな。一緒に行こうぜ〜」
深くは聞かず、ゆるく笑う翼に合わせて、美咲ちゃんも立ち上がり、三人は廊下に出た。

そして、座ったままの私を待つように振り返る。

「どした?持ち物は教科書だけでいいよ」
「大丈夫〜?」

健太くんと美咲ちゃんの声に背中を押されて、私も慌てて立ち上がった。

「翼ってほんとそういうとこあるよね。私が先に仲良くなりたかったのに」
「ほんとな。抜け駆けすんなよな〜〜」

前を歩く二人のにぎやかな背中を、私はぼんやりと眺めていた。

いつの間にか歩幅が小さくなったところで、肩をぽんと叩かれる。

「わかんないことあったら聞けよ、あいつら俺の幼馴染なんだ。ふたりとも超いいやつだから」

振り返った先で聞こえた翼の声は、昨日の夕方に聞いたものと同じでやわらかくて、胸がどきんと高鳴った。

私は髪に触れて、視線を落とす。

「……うん、ありがとう」

満足そうに笑った翼は、後ろから二人に声をかけて、私を真ん中にしたまま親しそうに笑い合う。

その自然な空気感は春の太陽みたいに温かかった。