オルゴールが鳴る夜、何度でもきみの元へ

「……ははっ」
少しの沈黙のあと、乾いた笑い声が聞こえてきた。

驚いているうちに、翼はそのまま、くたりとその場に座り込む。

「……俺なんて、生きてる意味ないと思ってた」

ぽつりと落ちた言葉に、私は耳を傾けた。

「父さんを苦しめて、夢まで捨てさせて……その上、愛してた母さんまで、俺が奪った」

俯いたまま、言葉を途切れさせながら続ける。

「母さんが願ってた父さんの夢まで、俺が壊した」

涙がぽたりと地面に落ちた。

「そんな俺に、生きる資格なんて、どう考えたってない……」

震える声で、思いを明らかにしていく翼に、私の目からもまた涙が溢れる。

「お父さんは、翼が何より大事だって言ってたよ」

翼の肩が小さく震える。

「翼がいなくなった未来……。お父さん、漁もやめちゃいそうなくらい、閉じこもってたんだよ」

翼は何も言わなかった。

「夢を諦めないでほしいなら、ちゃんとお父さんと話そう」

しゃがみ込む翼を見つめて、私は必死に声をかけ続ける。

「そのために何か必要なら、助けを求めてよ。
私が見てきた翼の周りには、いつも誰かがいた。
翼を助けたいって思ってる人、本当にたくさんいるんだよ」

潮風が吹き抜ける。

しばらくして、かすれた声が聞こえた。

「……俺、邪魔じゃないのかな」

消えそうなくらい小さな声に、私はすぐに頷いた。

そして、しゃがみこんだ翼をぎゅっと抱きしめる。

「邪魔なわけない」
震える声で言った。

「未来を見てきた私を、信じて」

翼の体から、少しずつ力が抜けていく。

やがてその柔らかな腕は、そっと私の背中に回された。

もう、動きそうにない翼の足を見て、私は、ずっと張り詰めていた心がほどけていくのを感じた。