オルゴールが鳴る夜、何度でもきみの元へ

チャイムが鳴ると、次の音楽の授業のために、みんなはぞろぞろと教室を出ていく。

私は、わざとゆっくり教科書を探すふりをして、席に座ったまま時間を潰していた。

まだ校舎をちゃんと覚えられていない。
音楽室がどこにあるのかも分からない私は、誰かの後ろを、こっそりついていこうと思っていたからだ。

そのとき——

「汐莉、音楽室知ってんの?」
名前を呼ばれたことに、一拍遅れて気づく。

振り返ると、教科書を取り出していた翼が、ロッカー前にしゃがんだままこちらを見上げていた。

「……え?」
戸惑う私と同時に、教室の空気が止まるのが分かった。

「いま、名前で呼んだよね?」
「翼、転校生とももう仲良いの?いつの間に……」
こちらを気にする声が、あちこちから飛んでくる。

やっぱり、翼は目立つタイプの男の子だったみたいだ。

集まる視線の中にいくつか混じる女の子たちの視線が怖くて、私は膝の上で、ぎゅっと両手を握りしめた。

「……えっと」
なんて答えれば、いちばん角が立たないだろう。

必要以上に踏み込まない、ひとりでも、別に平気。
そう思ってるのは本当だけど、変に目立って、余計な反感を買うことは避けたかった。