たっぷり寝て、次の日の朝には完全回復していた。
やっぱり十代の体力は、風邪の治りが早い!
そんなことを実感しつつ、学校へ。
「椎名さん、あの、お礼の会の飛び込み、まだ募集してる?」
わたしが勇気を出して聞くと、椎名さんはおどろいたような顔をする。
それからすぐに顔中で笑顔になった。
「うん! 出てくれるの?」
「ダンスでもいいかな?」
「もちろん! ってゆーか、ダンスもできるの?」
「うん、まあ、ちょっと」
「すごい! お礼の会、盛り上がるよー!」
椎名さんの言葉に、グループの女子たちがこちらに来た。
「え、なになに? 星谷さん踊るの?」「すごーい! お礼会めっちゃ楽しみ~」
みんな楽しそうにわたしを囲んでくれる。
うれしい、こんなふうにいってくれるなんて……。
捨てたはずの中学生活。
こんなに楽しくなるなんて思わなかった。
ダンス、がんばらなきゃ!
わたしは出場をすることを担任に話すべく職員室へ急ぐ。
廊下を歩いていたら、桐生と目が合う。
「おはよ」とわたし。
「生きてたか」と桐生。
なんだかニヤけてしまいそうだけど、わたしはぐっとこらえる。
それから桐生をにらみつけていう。
「生きてたか、なんて失礼すぎ」
「つーか、命の恩人にお礼もないのかよ」
桐生はそういって笑う。
わたしたちは、あくまでいつもとおり、仲良くないふり。
いつもケンカしてるふり。
桐生のこと嫌いだと思っていたときは、それが自然とできた。
だけど今は……。普通に話したい。
もっといっしょにいたい。
その気持ちをぐっとこらえる。
「なーにが命の恩人なの」
わたしはそれだけいうと、歩みを速めた。
桐生の視線を痛いほど感じる。
ちらりと振り返れば、桐生はこちらを見ていた。
寂しそうな、悲しそうな瞳。
今にも吸い込まれそうだ。
むしろ吸い込まれてしまって、桐生とずっと一緒にいたい。
……ってなに考えてるのよ、わたし!
わたしはそんな煩悩を振り切るべく、走り出した。
わかってる。
桐生が、命の恩人は大げさでも、中学生活の恩人であること。
椎名さんの苗字をさりげなく教えてくれた。
体育のバスケボールで、わたしのミスをカバーしてくれた。
それに……炎上から小珠をかばうために、活動停止宣言。
いくら自分が疲れていたからって、考える時間はたくさんあった。
それなのに、わたしを巻き込まないためにあのタイミングでの決断。
そう考えると、ある意味では、命の恩人なのかも。
だから、わたしがのびのびとダンスをすることは、桐生のVtuberの疲れを癒す可能性がある。たぶん。
お礼の会の申込書には、『内容をくわしく』という項目があった。
わたしはただ、ダンスをしようと考えていたけど、それじゃあ面白くない。
せっかく出るなら、もう少しインパクトがほしいよね。
しかも、しみついているのは小珠の曲のダンス。
ここ最近は、エンドさまの曲のダンスも練習している。
とはいえ、小珠のダンスが一番踊れる。
そうだ、それならいっそのこと――。
わたしは『内容をくわしく』のところに、詳細を書いた。
「体育館のプロジェクター? 大丈夫ですよ。お礼の会で使うのは問題ありません」
その日の放課後、わたしは職員室で担任教師に「体育館のプロジェクターは使わせてもらえるのか」と聞いた。
そうしたらOKらしくてホッと安心。
「星谷さん、お礼の会に出るのね。うちのクラスで積極的に出てくれる生徒がいるのは先生うれしいな」
先生はそういうとニッコリ笑った。
最初は職員室へ行くのも、担任の先生にと話すのも緊張した。
だけど、勇気を出してみてよかったな。まあ小さい一歩だけど。
「ありがとうございました。パソコンとか必要なものは自分で用意します」
それだけいって、その場を立ち去ろうとしたとき。
「あっ。出場希望者は生徒会役員にエントリーシートもらってね」
「申込書はさっき渡しましたけど」
「それがね、エントリーシートってのがまた別に必要なのよ。面倒だけど」
「わかりました」
「応援してますよ」
先生はにこにこで手を振ってくれた。
なんだか力が湧いてきたなあ。応援してますよ、なんて直接いわれるとうれしい。
それから生徒会役員からエントリーシートをもらい、記入。
すると生徒会役員のひとりが、「おもしろそう! 当日がすっごく楽しみ」といってもらえた。
彼女は生徒会長だったらしい。
知らない人――おまけに生徒会役員の人と話すのは、すっごく緊張したけど。
みんな良い人ばかりだったし、わたしの出し物にもかなり興味を示してくれた。
ああ、中学って思ったよりも良いところなのかもしれない。
味方につければきっとVtuberの活動のプラスになる。
そう思えて、わたしはウキウキしながら家に帰った。
その日から、毎日三時間はダンスの練習をした。
エンド様の曲の練習がメイン。
お礼の会のダンスは、少し考えがある。
どちらにしても振付は頭にきっちり叩き込んでおかないと。
あと、念のため、普段から声を変えてしゃべる練習。
これはお礼会とは関係ないんだけどね。
最近、学校でも椎名さんや、先生と話す機会が増えた。
だけど声を変え慣れてなくて、すぐに地声が出そうになる。
だからうまく切り替えられるように、普段から声を変えてしゃべるのだ。
もちろん、そんな忙しい中でも配信は毎日した。
他のVtuberとの交流も忘れない。
このときだけ、わたしは本当のわたしでいられる気がした。
でも、前ほど「Vtuberの活動だけが居場所」という気持ちはない。
中学では椎名さんたちがいる。
桐生もいる。
だから、もうVtuberの世界だけに引きこもっていなくてもいいんだ。
まあ、中学はさぼりたい日ばっかりだけどね……。
根っからの引きこもり体質だから。
やっぱり十代の体力は、風邪の治りが早い!
そんなことを実感しつつ、学校へ。
「椎名さん、あの、お礼の会の飛び込み、まだ募集してる?」
わたしが勇気を出して聞くと、椎名さんはおどろいたような顔をする。
それからすぐに顔中で笑顔になった。
「うん! 出てくれるの?」
「ダンスでもいいかな?」
「もちろん! ってゆーか、ダンスもできるの?」
「うん、まあ、ちょっと」
「すごい! お礼の会、盛り上がるよー!」
椎名さんの言葉に、グループの女子たちがこちらに来た。
「え、なになに? 星谷さん踊るの?」「すごーい! お礼会めっちゃ楽しみ~」
みんな楽しそうにわたしを囲んでくれる。
うれしい、こんなふうにいってくれるなんて……。
捨てたはずの中学生活。
こんなに楽しくなるなんて思わなかった。
ダンス、がんばらなきゃ!
わたしは出場をすることを担任に話すべく職員室へ急ぐ。
廊下を歩いていたら、桐生と目が合う。
「おはよ」とわたし。
「生きてたか」と桐生。
なんだかニヤけてしまいそうだけど、わたしはぐっとこらえる。
それから桐生をにらみつけていう。
「生きてたか、なんて失礼すぎ」
「つーか、命の恩人にお礼もないのかよ」
桐生はそういって笑う。
わたしたちは、あくまでいつもとおり、仲良くないふり。
いつもケンカしてるふり。
桐生のこと嫌いだと思っていたときは、それが自然とできた。
だけど今は……。普通に話したい。
もっといっしょにいたい。
その気持ちをぐっとこらえる。
「なーにが命の恩人なの」
わたしはそれだけいうと、歩みを速めた。
桐生の視線を痛いほど感じる。
ちらりと振り返れば、桐生はこちらを見ていた。
寂しそうな、悲しそうな瞳。
今にも吸い込まれそうだ。
むしろ吸い込まれてしまって、桐生とずっと一緒にいたい。
……ってなに考えてるのよ、わたし!
わたしはそんな煩悩を振り切るべく、走り出した。
わかってる。
桐生が、命の恩人は大げさでも、中学生活の恩人であること。
椎名さんの苗字をさりげなく教えてくれた。
体育のバスケボールで、わたしのミスをカバーしてくれた。
それに……炎上から小珠をかばうために、活動停止宣言。
いくら自分が疲れていたからって、考える時間はたくさんあった。
それなのに、わたしを巻き込まないためにあのタイミングでの決断。
そう考えると、ある意味では、命の恩人なのかも。
だから、わたしがのびのびとダンスをすることは、桐生のVtuberの疲れを癒す可能性がある。たぶん。
お礼の会の申込書には、『内容をくわしく』という項目があった。
わたしはただ、ダンスをしようと考えていたけど、それじゃあ面白くない。
せっかく出るなら、もう少しインパクトがほしいよね。
しかも、しみついているのは小珠の曲のダンス。
ここ最近は、エンドさまの曲のダンスも練習している。
とはいえ、小珠のダンスが一番踊れる。
そうだ、それならいっそのこと――。
わたしは『内容をくわしく』のところに、詳細を書いた。
「体育館のプロジェクター? 大丈夫ですよ。お礼の会で使うのは問題ありません」
その日の放課後、わたしは職員室で担任教師に「体育館のプロジェクターは使わせてもらえるのか」と聞いた。
そうしたらOKらしくてホッと安心。
「星谷さん、お礼の会に出るのね。うちのクラスで積極的に出てくれる生徒がいるのは先生うれしいな」
先生はそういうとニッコリ笑った。
最初は職員室へ行くのも、担任の先生にと話すのも緊張した。
だけど、勇気を出してみてよかったな。まあ小さい一歩だけど。
「ありがとうございました。パソコンとか必要なものは自分で用意します」
それだけいって、その場を立ち去ろうとしたとき。
「あっ。出場希望者は生徒会役員にエントリーシートもらってね」
「申込書はさっき渡しましたけど」
「それがね、エントリーシートってのがまた別に必要なのよ。面倒だけど」
「わかりました」
「応援してますよ」
先生はにこにこで手を振ってくれた。
なんだか力が湧いてきたなあ。応援してますよ、なんて直接いわれるとうれしい。
それから生徒会役員からエントリーシートをもらい、記入。
すると生徒会役員のひとりが、「おもしろそう! 当日がすっごく楽しみ」といってもらえた。
彼女は生徒会長だったらしい。
知らない人――おまけに生徒会役員の人と話すのは、すっごく緊張したけど。
みんな良い人ばかりだったし、わたしの出し物にもかなり興味を示してくれた。
ああ、中学って思ったよりも良いところなのかもしれない。
味方につければきっとVtuberの活動のプラスになる。
そう思えて、わたしはウキウキしながら家に帰った。
その日から、毎日三時間はダンスの練習をした。
エンド様の曲の練習がメイン。
お礼の会のダンスは、少し考えがある。
どちらにしても振付は頭にきっちり叩き込んでおかないと。
あと、念のため、普段から声を変えてしゃべる練習。
これはお礼会とは関係ないんだけどね。
最近、学校でも椎名さんや、先生と話す機会が増えた。
だけど声を変え慣れてなくて、すぐに地声が出そうになる。
だからうまく切り替えられるように、普段から声を変えてしゃべるのだ。
もちろん、そんな忙しい中でも配信は毎日した。
他のVtuberとの交流も忘れない。
このときだけ、わたしは本当のわたしでいられる気がした。
でも、前ほど「Vtuberの活動だけが居場所」という気持ちはない。
中学では椎名さんたちがいる。
桐生もいる。
だから、もうVtuberの世界だけに引きこもっていなくてもいいんだ。
まあ、中学はさぼりたい日ばっかりだけどね……。
根っからの引きこもり体質だから。



