「なんで活動停止なんかしたの?」
学校へ着くなり、桐生を呼び出して屋上で問い詰めた。
朝の学校はやけに静かで、この世にわたしと桐生ふたりきりみたいだ。
わたしは桐生にもう一度聞く。
「ねえ、活動停止ってどういうこと?」
別に怒っているわけではないけど、驚きでついつい責めるような口調になってしまう。
桐生は珍しく目を伏せ、張りのない声でいう。
「ああしなければ炎上してただろ。エンドの密会よりも、エンドの活動停止のほうがショッキングだから話題になると思って」
「そうだけど……。別に本当にクラスメイトなんだから放っておけばいいじゃない」
「放っておいたら、どんどん炎上していく。そうなれば小珠にも影響が出るだろ」
桐生はため息をついてこう続ける。
「あれは、おむすびがしたことだ。おれが責任を取るべきなんだよ」
「だけど、活動停止はさすがに……」
「小珠を……星谷を絶対に巻き込みたくはない。おれだけが炎上するならともかく、星谷まで炎上したら、おれは自分を一生、許せない」
そういった桐生のフェンスにかけた手が震えている。
これは悲しみなのか、それとも怒りなのか。
わたしをかばってくれたことは純粋にうれしい。だけど、こんなの……。
「わたしは、活動停止なんかしてほしくなかった」
わたしがそれだけいうと、桐生は黙り込んだ。
長い沈黙のあと、桐生がゆっくりと口を開く。
「星谷がそういってくれただけで、十分だ。それに」
桐生は息を吐いてから続ける。
「実は、以前から活動停止を考えてはいたんだ」
「えっ?! そうなの?! なんで?」
「エンドはかなり人気だし、伝説のアイドルともいえる。企業コラボもどんどん依頼がくるし、ちょっとだけどテレビ出演もした。来月はソロライブもある」
「うん。すごいよね。やっぱ伝説だよ」
「だけど、最近は忙しいだけでとにかく疲れるんだ。企業コラボもテレビ出演も、仕事は気楽にできないし。神経をすり減らすだけ……」
桐生は小さく息を吐いてから続ける。
「もちろん仕事ってのはそういうものだっては頭ではわかってる。でも、Vtuberの活動がどんどん楽しいと思えなくなるんだ」
それから、まるでひとりごとのようにいう。
「むしろこのままいくと、Vtuberの活動を嫌いになりそうで……」
初めて聞いたエンドさまの本音だった。
なんでも完璧にできて器用に生きられるって桐生のことを思ってた。
でも本当は大きなプレッシャーの中、ひとりで戦ってたんだ……。
「だから、今回の動画の件がなくても活動停止は選択肢のひとつだった、ってことだよ」
桐生はそういうと、「心配すんな」と笑う。
普段通りの桐生のように見える。
でもなんだか桐生は、光を失った星のようだった。
あんな弱音を聞いてしまったら、わたしはなにもいえない。
桐生は、「じゃあおれは日直だから教室戻る」と屋上を出て行った。
結局わたしは、「いつ戻ってくるの?」とか、「早く復帰して」なんて聞けなかった。
だって、このまま無理に続けてVtuberの活動を嫌いになってほしくない。
だけど早めに復帰はしてほしい。
できることなら、Vtuberの活動を楽しいと思ってほしい。
ああ、矛盾してるな。
でもカラフルの後輩として……ううん、おむすびとしては、早めに復帰してほしい。
とはいえ、義務のようにVtuberの活動を続けて活動停止どこか卒業なんてことになったら……。
そう考えると途端に不安と恐怖が全身をおおう。
「どうしたらいいんだろう」
わたしはぽつりとつぶやいたけど、何のアイデアも浮かばない。
それにはどうしたらいいんだろう?
わたしに何ができるんだろう?
エンドさまの早めの活動再開と、桐生がVtuberを楽しめる方法。
そんなことを考えているうちに、お昼休みになってしまった。
チラリと桐生のほうを見ると、男子たちとなにやら楽しそうに話している。
すると桐生と目が合う。
わたしが慌てて視線をそらした数分後。
スマホに桐生からメッセージが届く。
【今日はおれは田中たちと食べる。星谷も友だちを大事にしろよ】
「そんなこと……べつにわざわざいってくれなくても……」
小声でそうつぶやいたけど、そんなふうにフォローしてくれるのがうれしかった。
いや、うれしいのは桐生と屋上でお昼を食べなくていいことだから!
そう考えなおして、わたしはスマホの画面をじっと見つめる。
返信、したほうがいいよね。
でもべつに、わたしは桐生とお弁当が食べたかったわけじゃないし。
あれこれと考えて、せめてスタンプだけでもと思って指を動かそうとした瞬間。
「星谷さん、お昼食べよ」
椎名さんにそう声をかけられて飛び上がるほどに驚いた。
わたしはスマホを落としかけ、驚きを隠して笑顔をつくる。
「あ、うん。食べよう」
びっくりしたー。完全に不意打ちだったから……。
やっぱ返信はあとにしよう。トイレとか、ひとりのときにしよう。
エンドさまとの二度目のスキャンダルは何がなんでも回避しなきゃ!
学校へ着くなり、桐生を呼び出して屋上で問い詰めた。
朝の学校はやけに静かで、この世にわたしと桐生ふたりきりみたいだ。
わたしは桐生にもう一度聞く。
「ねえ、活動停止ってどういうこと?」
別に怒っているわけではないけど、驚きでついつい責めるような口調になってしまう。
桐生は珍しく目を伏せ、張りのない声でいう。
「ああしなければ炎上してただろ。エンドの密会よりも、エンドの活動停止のほうがショッキングだから話題になると思って」
「そうだけど……。別に本当にクラスメイトなんだから放っておけばいいじゃない」
「放っておいたら、どんどん炎上していく。そうなれば小珠にも影響が出るだろ」
桐生はため息をついてこう続ける。
「あれは、おむすびがしたことだ。おれが責任を取るべきなんだよ」
「だけど、活動停止はさすがに……」
「小珠を……星谷を絶対に巻き込みたくはない。おれだけが炎上するならともかく、星谷まで炎上したら、おれは自分を一生、許せない」
そういった桐生のフェンスにかけた手が震えている。
これは悲しみなのか、それとも怒りなのか。
わたしをかばってくれたことは純粋にうれしい。だけど、こんなの……。
「わたしは、活動停止なんかしてほしくなかった」
わたしがそれだけいうと、桐生は黙り込んだ。
長い沈黙のあと、桐生がゆっくりと口を開く。
「星谷がそういってくれただけで、十分だ。それに」
桐生は息を吐いてから続ける。
「実は、以前から活動停止を考えてはいたんだ」
「えっ?! そうなの?! なんで?」
「エンドはかなり人気だし、伝説のアイドルともいえる。企業コラボもどんどん依頼がくるし、ちょっとだけどテレビ出演もした。来月はソロライブもある」
「うん。すごいよね。やっぱ伝説だよ」
「だけど、最近は忙しいだけでとにかく疲れるんだ。企業コラボもテレビ出演も、仕事は気楽にできないし。神経をすり減らすだけ……」
桐生は小さく息を吐いてから続ける。
「もちろん仕事ってのはそういうものだっては頭ではわかってる。でも、Vtuberの活動がどんどん楽しいと思えなくなるんだ」
それから、まるでひとりごとのようにいう。
「むしろこのままいくと、Vtuberの活動を嫌いになりそうで……」
初めて聞いたエンドさまの本音だった。
なんでも完璧にできて器用に生きられるって桐生のことを思ってた。
でも本当は大きなプレッシャーの中、ひとりで戦ってたんだ……。
「だから、今回の動画の件がなくても活動停止は選択肢のひとつだった、ってことだよ」
桐生はそういうと、「心配すんな」と笑う。
普段通りの桐生のように見える。
でもなんだか桐生は、光を失った星のようだった。
あんな弱音を聞いてしまったら、わたしはなにもいえない。
桐生は、「じゃあおれは日直だから教室戻る」と屋上を出て行った。
結局わたしは、「いつ戻ってくるの?」とか、「早く復帰して」なんて聞けなかった。
だって、このまま無理に続けてVtuberの活動を嫌いになってほしくない。
だけど早めに復帰はしてほしい。
できることなら、Vtuberの活動を楽しいと思ってほしい。
ああ、矛盾してるな。
でもカラフルの後輩として……ううん、おむすびとしては、早めに復帰してほしい。
とはいえ、義務のようにVtuberの活動を続けて活動停止どこか卒業なんてことになったら……。
そう考えると途端に不安と恐怖が全身をおおう。
「どうしたらいいんだろう」
わたしはぽつりとつぶやいたけど、何のアイデアも浮かばない。
それにはどうしたらいいんだろう?
わたしに何ができるんだろう?
エンドさまの早めの活動再開と、桐生がVtuberを楽しめる方法。
そんなことを考えているうちに、お昼休みになってしまった。
チラリと桐生のほうを見ると、男子たちとなにやら楽しそうに話している。
すると桐生と目が合う。
わたしが慌てて視線をそらした数分後。
スマホに桐生からメッセージが届く。
【今日はおれは田中たちと食べる。星谷も友だちを大事にしろよ】
「そんなこと……べつにわざわざいってくれなくても……」
小声でそうつぶやいたけど、そんなふうにフォローしてくれるのがうれしかった。
いや、うれしいのは桐生と屋上でお昼を食べなくていいことだから!
そう考えなおして、わたしはスマホの画面をじっと見つめる。
返信、したほうがいいよね。
でもべつに、わたしは桐生とお弁当が食べたかったわけじゃないし。
あれこれと考えて、せめてスタンプだけでもと思って指を動かそうとした瞬間。
「星谷さん、お昼食べよ」
椎名さんにそう声をかけられて飛び上がるほどに驚いた。
わたしはスマホを落としかけ、驚きを隠して笑顔をつくる。
「あ、うん。食べよう」
びっくりしたー。完全に不意打ちだったから……。
やっぱ返信はあとにしよう。トイレとか、ひとりのときにしよう。
エンドさまとの二度目のスキャンダルは何がなんでも回避しなきゃ!



