「もう離してよ」
「離さないよ。嫌だよ、茉桜がいないとやだ」
彼の声に焦りを感じた。
何故だろう。
分からない。
別れないで、とは違う、離さないに聞こえた。
その時、ガチャっと玄関が開く音がする。
え、やばい?
親御さん帰ってきた?
そう思っていたら、煌牙が少し抱き締める力を強めた。
足音が聞こえて、ノックすることもなく、煌牙の部屋に入ってきたのは、ばっちり濃いメイクをした女性、おそらく煌牙の母親。まだ30代くらいに見える。
「あんた何女連れ込んでるのよ!穢れるじゃない!」
穢れる…?
「この家の中には、女は私だけでいいの!連れ込むな!」
私にはニコニコ優しく話しかけてくれる煌牙が、何も答えず俯いている。
「俺の大事な彼女だ。穢れるとか言うな」
いつもより低い声で煌牙は言った。
大事な…彼女。
「はっ、馬鹿馬鹿しい。どうせヤリ捨てだろ?」
「そんなことしない」
私は一人っ子だからよく分からないけど、だとしても母親と高校生の息子の会話にしては、かなりトゲがあるように感じる。
母親の乱暴な口調に腹は立つが、煌牙は…私を庇うような発言をしている。



