「……龍崎、くん……?」
私は、自分の体にかけられた重い特攻服の裾をギュッと握りしめた。
使い込まれた布地からは、彼特有の石鹸の香りと、バイクのオイル、そして……彼が必死にここまで走ってきた証である、熱い体温が伝わってくる。
「……喋るな。もう、大丈夫だから」
龍崎は短くそう言うと、震える私の体に腕を回し、まるでお姫様を扱うように優しく、けれど力強く抱き上げた。
立ちふさがろうとした一ノ瀬が、冷徹な仮面をかなぐり捨てて叫ぶ。
「待て! 龍崎……! そんなボロボロの女を連れてどこへ行く! 試合はもう終わっている、君の居場所なんてどこにも――」
「うるせぇよ、メガネ。……居場所なら、ここにあるんだよ」
龍崎は一ノ瀬を一瞥もせず、倒れていた愛車のエンジンを蹴り上げた。
バリバリバリッ! と、静寂を切り裂く爆音が響き渡る。
彼は私を自分の前に座らせ、片手で私の腰をしっかりと引き寄せた。
「実花。……しっかり掴まってろ。少し、揺れるぞ」
「……うん。……バカね、飛ばしすぎないでよ」
私は彼の胸に顔を埋めた。
倉庫の壁を突き破り、夕闇の街を猛スピードで駆け抜ける。
背後で一ノ瀬の喚き声が遠ざかり、代わりに耳に届くのは、龍崎の激しい心臓の鼓動だけ。
向かう先は、私たちの「戦場」である学校だ。
私は、自分の体にかけられた重い特攻服の裾をギュッと握りしめた。
使い込まれた布地からは、彼特有の石鹸の香りと、バイクのオイル、そして……彼が必死にここまで走ってきた証である、熱い体温が伝わってくる。
「……喋るな。もう、大丈夫だから」
龍崎は短くそう言うと、震える私の体に腕を回し、まるでお姫様を扱うように優しく、けれど力強く抱き上げた。
立ちふさがろうとした一ノ瀬が、冷徹な仮面をかなぐり捨てて叫ぶ。
「待て! 龍崎……! そんなボロボロの女を連れてどこへ行く! 試合はもう終わっている、君の居場所なんてどこにも――」
「うるせぇよ、メガネ。……居場所なら、ここにあるんだよ」
龍崎は一ノ瀬を一瞥もせず、倒れていた愛車のエンジンを蹴り上げた。
バリバリバリッ! と、静寂を切り裂く爆音が響き渡る。
彼は私を自分の前に座らせ、片手で私の腰をしっかりと引き寄せた。
「実花。……しっかり掴まってろ。少し、揺れるぞ」
「……うん。……バカね、飛ばしすぎないでよ」
私は彼の胸に顔を埋めた。
倉庫の壁を突き破り、夕闇の街を猛スピードで駆け抜ける。
背後で一ノ瀬の喚き声が遠ざかり、代わりに耳に届くのは、龍崎の激しい心臓の鼓動だけ。
向かう先は、私たちの「戦場」である学校だ。



