勝手に恋して


 約束したのはテスト終わりの日曜日。
 テスト前も、何度かLINEをして、テスト期間勉強に集中できなかった。今回はやばいかもしれない。
 場所は、莉子の最寄駅の近くの図書館。いつもは混んでいるらしいから早めに行くことになった。
 LINEをしている時の莉子はいつも通り優しく、早く現実で話したいと思う。
 一緒に行くメンバーは莉子と俺と莉子の友達と葵先輩の4人。本当は2人が良かったけれど、気まずいかもということでこうなった。
 でも女子3人というのはだいぶきつい気もするけど。

 当日
 朝、何もない休日ならお昼前まで寝ているけど、今日は7時に起きた。
 楽しみすぎてアラームの音よりも早く起きた。こんな気持ちいつぶりだろう。
 小学生の時に北海道に行く日の朝か、ユニバを行った日の朝か。
 昨日必死に決めた服を来て全身鏡を見た。自分で見た感じ似合ってると思う。
 あまり使い慣れないアイロンで、髪の毛を少しだけセットした。癖っ毛がいつもよりもマシな気がする。
 お気に入りの鞄に、勉強道具を入れ、家を出た。朝から俺の鼓動はうるさい。
 
 最寄駅に着くと、約束していた葵先輩はすでに着いていた。
 歩いていると俺に気づいたようで手を振った。
 少し走って先輩の元へ行った。
「おはよー今日は頑張ってね。」
「はい。ほんとに来てくれてありがとうございます。」
「いいのいいの。じゃあ早く行こ。」
 そう言って俺たちは電車に乗り込んだ。
 こういう時はこうして、と恋愛情報を教えてもらいながら向かった。
 話をしているとすぐに電車がホームに着いた。

 改札を出て、少し歩いて図書館に入った。
 約束していた一階のカフェ前に行くと、莉子と莉子の友達がいた。
 ドキリと胸の音が鳴る。莉子だ、と。
 葵先輩に目配しをして、莉子の方へ向かった。先輩は少しだけ楽しそうだった。
 改めて思うと話すのは初めて。勝手に好きになられた莉子はどんな気持ちなんだろう。
 そんな考えがふと浮かんだ。いやいや、今はそんなこと考えたくない。
「えっと、三浦蓮です。莉子…だよね?」
 体の温度が上がる気がした。
「うん。蓮君と、琴音先輩のお友達…ですよね?」
 戸惑いつつ、莉子はそう返した。俺たちは小さく頷いた。
 練習試合とは違う、長い黒髪ロングをサラッと下ろしていた。
 クリっとした大きな瞳、小さい顔と口。優しい笑顔と透き通るような可愛すぎる声。
 こんな国宝のような莉子と話せている俺は幸せ者だと思う。
「私は、莉子の友達の葉菜です。」
 莉子の隣に立っていた少し小さめの彼女はそう言った。
「じゃあこんなところでもあれだし、行こっか。」
 莉子はそう言って先陣をきった。莉子はどんな子なんだろう。そんな気持ちで胸がいっぱいだった。
 俺は莉子と葉菜さんが進むのを、葵先輩と着いて行った。お互い何を話したら良いのか分からず、ちょっと気まずいけど。
 3階に上がり、4人席に座った。一番奥が葉菜さん、その隣に莉子、その前に俺、その隣に葵先輩。
 お互いの顔を見たり、そらしたり、気まずい時間になった所で、葵先輩が話題を作った。
「ねえねえ、中2ってさ、今何の勉強してんの?」
「私たちの方は、数学は証明で、英語が不定詞とかです。」
 葉菜さんがそう答えた。
「えー懐かしいね。うちの学校も一緒?」
「はい、両方一緒です。」
「そうなんだ。じゃあ分かる人いっぱいいるじゃん。先輩もほら、ここにいるんだし。早く宿題終わらそ。」
 そう言って先輩は数学の教材を広げ始めた。俺も数学をすることにしよう。
 先輩の言葉一つで少しだけ柔らかい空気になった気がする。