勝手に恋して

 出会いは部活だった。
 その日はバトミントン部の練習試合で、俺の学校に来る日だった。
 体育館の中は知らないユニフォームが混ざり、いつもと違う空気が流れていた。
 その中の1人に目が止まった。ゼッケンを見ると“篠原”と書いてあった。
 少し背が低めで、髪をぴっしりと結んでいた。なぜかその雰囲気に惹かれてしまった。
 
 プレーを見ているふりをして、何度も目で追ってしまった。
 ─こんな感情は初めてだった。

 学校からの帰り道、篠原さんのことが知りたくて、家が近い西野葵先輩と帰ることにした。
「久しぶりだね一緒に帰るの。何、なんか悩みでもあるんでしょ?」
 いつも通り感が鋭い。葵先輩は、いつも悩みを聞いてくれる優しい先輩。
「実は一目惚れしたかもで。」
「え、もしかして今日とか?」
 葵先輩が驚いた顔でこっちを見た。
「はい、練習試合に来てた、篠原って子に。ずっと目で追ってしまって。」
 俺の言葉を聞き、少し黙った後にやりと笑った。
「それは一目惚れだね。私さ、向こうの学校に友達がいるから下の名前とかLINEとか聞いてみるね。」
 胸が高鳴った。
「ほんとですか?」
「ちょっと待って、今LINEする。」
 そう言い、葵先輩はポケットからスマホを取り出した。
 自分でもよくわかるぐらい心臓の音がうるさかった。

 葵先輩がスマホを操作するのを見ながら、何度も深呼吸をした。
「うん、今送った。すぐ返ってくると思う。ほら。」
 風のような速さで返信がきた。葵先輩の友達は村瀬琴音という名前らしい。
(葵:篠原さんって向こうのチームにいるよね?ちょっとその子について知りたくてさ。下の名前とか教えて。)
(琴音:篠原莉子ちゃんのことかな?多分。下の名前は莉子ちゃん。何かあったの?)
(葵:うん!多分、その子!なんか私の後輩ちゃんがさ一目惚れしたみたいでさ。笑)
(琴音:え!そうなの!莉子ちゃん可愛いからね。で、うちは何したらいい?)
(葵:LINEとかもらえない?)
(琴音:ちょっと聞いてみる!待ってて。)
 横で見ている俺の心臓はバクバクしていた。こんな優しい先輩が2人もいて幸せだなと思う。

 数分後。
(琴音:莉子ちゃんからOKでたよ!すぐ送るね。ちなみにその一目惚れした子の名前は何て言うの?)
(葵:ありがとう!!三浦蓮君。覚えといて!蓮と繋げて良いってことだよね?)
(琴音:蓮君ね、わかった!うん、そう!向こうにまた色々聞いとくね。)
(葵:ありがとう。)
 葵先輩がこっちを見てニコッと笑った。
「良かったじゃん。私めっちゃ応援するから!」
「ほんとにありがとうございます。先輩がいなかったら何も出来なかったです。村瀬先輩にもお礼を伝えといて下さい。」
「うん、分かった。じゃあLINE送ったから確認して。」
 スマホを開き、LINEを見ると“莉子”と書かれていた。
 胸の奥から込み上げてくるこの想いをどうすればいいのだろう。