夢見草が咲くころに


  *

 大きくなるにつれて夢を見るようになった。
 そこは常春の世界。
 私の前でぺこぺこと謝る男の子。その後ろに、白っぽい髪の綺麗なお兄さん。
 徐々に夢がはっきりしてくると声も聞こえてきた。

『本当にごめん。絶対帰してやるから』
 叱られたのか半べそをかいている男の子・コタロウは私にそう約束をした。
 その子やお兄さんたちの話によると、コタロウが外の世界から帰ってくるときにコケて、たまたま近くにいた私を掴んでしまったそうだ。それで一緒にコテンと、あちら側の世界に転がり込んだという。

 意味は分からないし、おうちには帰れないしで大泣きする私に、コタロウは声をかけたり花を持ってきたりと、一生懸命慰めてくれた。
 自分のせいとはいえ、同じ年頃の男の子が癇癪も起こさず慰め、元気づけ続けてくれた。今思えば大したものだと思う。

 だんだん元気になった私はすっかり彼と仲良くなって、昼間は元気にコタロウと走り回るようになった。
 花を摘んだり、川に葉っぱの船を流したり。木に登った時には、見える景色の美しさに夢中になった。
 うん。あれは精霊とか神様の領域だったんだと思う。
 羽の生えた人に抱っこされて空を飛んだことさえあるんだもの。

 あんなに幸せな日は二度とないんじゃないかと思うくらい、キラキラした日々。
 でもお母さん達に会えなくて悲しかった。

「お母さんに会いたい」

 そう呟く私に、コタロウは困ったような、泣くのを我慢してるみたいな顔になる。それを見ると私も泣きたくなるから口にしなくなり、元の生活を少しずつ忘れていった。

「ずっとここにいたいな」

 本気でそう思い始めていた私にコタロウは嬉しそうに笑うけど、他の人たちは難しい顔になる。白い髪のお兄さん(名前はユメミさん)はいつも、

「本当にそう思う?」

 と、不思議な目をした。遊び疲れてウトウトしていると、

「人の命は短いけれど、僕にとってはそれがとても尊くて、何よりも愛しいんだよ」

 なんて、不思議なことを言っていたっけ。