夢見草が咲くころに

 警察に通報されたんだったかな? そのままその旅行者のお姉さんたちと待っていたら、おまわりさんやお母さん達、それから救急車なんかもやってきて大騒ぎだった。

 でも私は、消えたその日のままの装いで何も覚えておらず、キョトンとしてるだけ。
 身ぎれいなままだったから、時間を超えたのでは? なんて、荒唐無稽な話もあったらしい。
 元々この十年桜には神隠しの伝説があるから、地元の人たちは何となくその話題には触れなくなった。

 神隠しにあった子は、天狗だか精霊だか、あるいは神様だかの伴侶だって迷信があるからだ。いずれ神様の妻になる子かもしれないから、そっとしよう。そんな感じなんだと思う。

 でも新興住宅地なんかに住む後から来た人達には、それこそただの迷信。その人たちにとって私はちょっと腫れものとか、場合によっては忌避される存在に見えるらしい。
 当時ニュースも流れちゃったから、検索すると結構面白おかしく書かれていることも知っている。

 でも気にしない。気にする必要なんてない。

夢見草(ゆめみぐさ)の咲くころに会いに行く』
 当時からぼんやりと残る約束の声はとても優しかったから。
 私はいつも守られている。そう思えた。