夢見草が咲くころに


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 修了式が終わり、明日から春休み。
 先週までの寒さが嘘みたいに、空の色も春めいてる。
 カフェには同じ高校の人が結構来ていて、こっちを見てひそひそしている子もいる。でも気にしない。私は悪いことなんてしていない。

 実乃里ちゃんは相変わらず「尊い」猫写真や動画を見せてきながら、

「やーねー。うちの子が可愛いからって」

 うふっと、普段は見せない迫力ある笑顔で一瞬そちらを見た。
 猫と見せかけて、うちの子とは私のことだ。

「うちの子には王子様がいるんですよ~」

「二階堂も、もう少し考えろっての」

 由衣ちゃんが苦々しく言って、アイスティーのストローをくわえた。


 私はついさっき、二階堂君に告白された。

 二階堂君は結構かっこいい男子で、クラスは違うけど一年でも目立つ存在だ。
 接点と言えば、前期の委員が一緒で、一度だけプリントまとめを一緒にしたことがあるくらい。後期で委員が変わったあと、廊下で一度「試合が近くて、委員までは出来なくなったんだ」と、なぜか言われて不思議だった。
 会話したことなんてそれくらい。会えば挨拶くらいはするけど。

 だから修了式が終わって教室に向かっている時に突然腕を掴まれて、

「九谷鈴さん、俺と付き合って」

 と言われた時は、正直告白だとは思わなかった。