夢見草が咲くころに

「鈴~、見て見て。これ尊くない? 控えめに言っても尊いよね!」

 黙々と帰り支度をしている私に、実乃里ちゃんがスマホの写真を見せてくる。
 そこには彼女の飼い猫が二匹寄り添うように寝ていて、その可愛さに思わず笑みがこぼれた。

「あ、笑った。やっぱ、うちの子最強!」

 ケラケラと呑気に笑っているけれど、やっぱり実乃里ちゃんは私を励まそうとしてくれたみたいだ。

 それを見て、今度は由衣ちゃんがとっときの画像なるもの出してくる。

「尊さならこれも負けない!」

 そこにはイケメン達がじゃれ合うイラスト。一人は大人っぽいお兄さんキャラで、やんちゃそうなもう一人は弟っぽいキャラ。
 由衣ちゃんの好きなゲームの絵だけど、多分これは彼女のお姉さんが描いたものだ。違う高校だからあまり会ったことはないけれど、めちゃくちゃ美人のお姉さん。

「相変わらず上手だね」

 感心して頷くと由衣ちゃんは照れ臭そうに笑った。

「鈴、この二人のビジュアル気に入ってたみたいだから、お姉にリクエストしたの。今届きたてホヤホヤ」
「えっ、そうなの。嬉しい」

 私はその絵を見て、あふれ出す懐かしい気持ちに胸がきゅっと痛くなる。
 懐かしい? ううん、有り得ない。こんな光景はなかったんだから。
 でも切なさに胸が痛い。

「やっぱり鈴もやろうよ。はまるよ?」

 私の表情に気づいた由衣ちゃんがゲームに誘ってくれるけど、

「むしろズブズブにはまりすぎそうだから止めとく」

 と笑って手を振る。いつもの会話にホッとした。

「さあ、帰ろう。何か食べていこうよ」

「あ、私駅東のカフェに行きたい。クーポンあるんだ」

「いいね。鈴もそこでいい?」

「いいよ」