「和樹っ、ごめんね!寝坊した!」
膝に手をついて、息を切らせながら人だかり越しに声をかける。
女の子達がびっくりして私に注目する中、和樹はその間を縫って私の目の前にやってきた。
「知ってる。誰かさんがモーニングコールしてって言うからしたのに、何回かけても出ないし?
おかげで2人分の設営しなきゃだったし?
先生の目誤魔化すの、大変だったなー」
下げた頭に淡々とした言葉が降ってくる。
罪悪感がぐっさりと胸に刺さった。
「ゔ……っごめん、この借りは必ず返すから……!」
弱りきって顔を上げると、和樹はぷっと片眉を下げて笑い出す。
それから、私の頭をぽんぽんと軽く叩いた。
「ふは、ジョーダン。
ていうか起きたんなら通話出てよ。心配するでしょ」
「ご、ごめん……1分でも早く着かなきゃって思って」
「そんなことだと思ったけど。
ほら、受付の準備行くぞ。俺らの担当、1年A組だって」
ぽかんとしてる女の子達に、和樹は「ごめん、行くね」と軽く会釈して私と廊下を歩き出す。
「彼女いたのかぁ」なんて残念そうな声が聞こえてきたけど、違う。
和樹と私は、1年生の時のクラスメイト。
もうちょっと言えば、クラス委員長と副委員長。
1年間一緒にクラス運営をして仲良くなった、友達だ。
1年A組の教室の前に設置したテーブルの前に、2人で並ぶ。
机の上には“入学おめでとう”のリボンのついたピンクの花のコサージュと、積まれた資料。
1年A組になる新入生達に、コサージュと資料を渡してあげるのが、受付のお仕事。
「入学おめでとうございます」
持ち場に立ってすぐ、わっとラッシュがやってくる。
和樹が資料を渡して、私がコサージュを渡す。
和樹から資料を受け取る時、女の子達はぽーっとした顔で和樹の顔に見惚れてる。
まるで王子様に出会ったお姫様みたいに。
わかるよ。和樹って顔立ちはシュッとしてるのに表情は優しくて、王子様みあるもん。
「……なに?見過ぎ」
ようやくラッシュが途切れたから、じっと和樹の横顔を凝視しちゃってたみたい。
気まずそうに眉を寄せた和樹が、こっちを見て苦笑いしてた。



