空を知らない君に送る唄


式典は無事に終わり、澄華たちはこれから⾏動を共にする班のメンバー と顔合わせをすることになった。

⼀番前に並んでいた澄華は、上官に⾃分が⼀班所属であることを

告げられた。

上進隊は基本的にスリーマンセルの班編成だ。

隊には階級があり、上から、『芍薬』『牡丹』『百合』の三段階に 分かれている。

ちなみに、澄華たち新⼈隊員の階級は『百合』だ。

⼊隊して1年以上経てば、『牡丹』に昇格できる。

班の班⻑は、『牡丹』か『芍薬』の隊員が務め、残りの⼆枠に『百合』 が⼊る。

全て、班の⽣存率を少しでも⾼めるための配置らしい。

上官に促され、澄華は演説台前へと歩を進めると、そこにはすでに ⼀⼈の男⼦が⽴っていた。

柔らかな茶髪に、タレ⽬がちな琥珀⾊の瞳。

その瞳が澄華と合うと、男⼦はぱっと顔を輝かせ、満⾯の笑みを 浮かべて駆け寄ってきた。

「もしかして⼀班?俺も同じ!!」

思わずたじろぐ澄華。

曖昧な表情で⽬を逸らしながらも、少しだけ頷く。

男⼦はさらに⽬を輝かせた。

「俺、佐倉陽⽃!今年で16!よろしくな!!」

⼿を差し出してきたその勢いに、澄華も反射的に握⼿を返す。

「あ、⾬宮澄華……私も16才。」

⼆⼈の⽬が、⼀瞬軽く交わる。

少しの緊張と、ほんのわずかな期待――

これから始まる班での時間が、澄華の胸を⼩さく弾ませた。

その時、後ろから低く、鋭い声が響いた。

「うるせぇな……ここはガキの遊び場かなんかか?」

澄華が咄嗟に振り返ると、そこに⽴っていたのは、

⿊髪で鋭い⽬つきをした男だった。

モデルと⾔われても違和感を感じないほどに整った顔をしている。

⽬が合った瞬間、胸の奥が凍るような感覚が⾛った。

隊服の肩部分を⾒ると、そこには芍薬の紋章――上進隊でも数えるほどしかいない、

最⾼階級の刺繍が輝いていたからだ。

⾔葉を失い、⽬の前の男をじっと⾒つめる澄華。

しかし、そんな沈黙を破ったのは、陽⽃だった。

「もしかして、⼀班の班⻑ですか?階級『百合』の佐倉陽⽃っす!

……うるさかったですか?すいません!!」

そう⾔って頭を下げた陽⽃に倣って、澄華も慌てて頭を下げる。

「同じく、階級『百合』の⾬宮澄華です。申し訳ありませんでした。」

しかし、⽬の前の男は仁王⽴ちのまま腕を組むと、深いため息をついた。

「運悪く、⼀班班⻑…お前らの上官になった氷室凛だ。 階級は⾒ての通り『芍薬』。

……今のところ、それ以外お前らに 教えるつもりはない。

はっきり⾔って、お前らを信⽤してないからな」

その低く冷たい声に、澄華の背筋が⾃然と伸びる。

陽⽃の元気さとは正反対の、圧倒的な存在感。

⼼の中で、澄華は⼩さく息を飲んだ。

⼆⼈が⼝を開く間もなく、凛は背を向けて歩き出した。

「……着いてこい」

澄華と陽⽃は慌てて後を追う。

隣の陽⽃は、やらかしたとでも⾔うように両⼿を合わせ、⼝パクで

「わりぃ」と謝ってきた。

澄華は⾸を軽く振って、⼝パクで「へいき」と返す。