空を知らない君に送る唄


⼆年前、⽗の遺志を背負うと決めたあの⽇の感覚が、

まるで昨⽇のことのように甦る。

町の皆は上進隊に⼊りたいと打ち明けると、⾎相を変えて必死に 辞めるよう説得してきたが、

最後は泣きながら応援してくれた。

⾎の滲むような訓練の⽇々、痛みを押し殺しながらも前に進み続けた ⽇々――

すべてが、今この瞬間のためだった。

やっと、ようやく⽴てたスタートライン。

夢への第⼀歩だった。

(お⽗さん、私、やっとここまで来たよ)

胸の奥で⼩さく呟く声に、⾃分でも驚くほど熱い感情がこみ上げた。

だが、それを表に出すわけにはいかない。

上進隊の⼀員になるには、冷静さと強さが求められるからだ。

今ここで冷静さを⽋いていては元も⼦もない。

澄華は⾃然と背筋を伸ばし、瞳を前に据えた。

上官の演説は続く。

地上で待つ危険、異喰の脅威、そして仲間を守る覚悟――澄華は⾔葉の

ひとつひとつを⼼に刻む。

⼼の奥で、静かに⽕が灯るのを感じた。

これから始まるのは、まだ⾒ぬ世界への挑戦。

⽗が夢⾒た空の下で暮らす⽇を、澄華は⾃分の⼿で掴み取るのだ。

澄華はふと周囲を⾒渡した。

新しい仲間たち、同じ志を持つ者たちの顔。

胸の奥で、⼩さな決意が確かに固まる。

「お⽗さん……⾒ててね。」

澄華の⽬は、まだ⾒ぬ地上の光を追いかけるように、真っ直ぐ前を ⾒据えていた。