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けれど、私が⼗三になった年の冬。
地上から帰ってきた上進隊の中に
……………………………………………⽗の姿はなかった。
胸の奥が、⾔葉にできないまま凍りつくようだった。
――享年41歳。
まだまだこれからという年齢だった。
あとから聞いた話だが、⽗が率いていた班は任務中、運悪く異喰の 群れに襲われたらしい。
そこで、班員たちを逃がすため、⽗は⼀⼈でしんがりを務め、異喰に特攻したのだそうだ。
「…お…⽗、さん……」
⾔葉にならない呟きが、部屋の静けさに吸い込まれる。
死体はすべて⾷べ尽くされてしまったらしく、⼿元に戻ってきたのは
ほんの⼀⽋⽚の⾻だけ。
⼩さな⾻⽚を握り締めたとき、現実だとわかっていても、
夢の中にいるかのような錯覚に襲われた。
⽗が率いた班の班員だったという男は、私の前で泣き崩れ、
何度も何度も許しを請うていた。
「……すまない……俺たちを守るために……」
その声を聞きながら、私の胸の奥で何かが壊れた。
涙は出なかった。
ただ、冷たい空気の中で、⽗の不在だけが重くのしかかってきた。
あの⽇から、地上の話を聞くたびに⽗の笑顔が脳裏をよぎり、
胸の奥にぽっかりと⽳が空いてしまったような感覚が続いた。
だが、それから丸⼀年が経過した、⽗の命⽇。
朝の光はいつもと変わらず差し込んでいたはずなのに、胸の中がざわついていた。
ふと、このままでいいのだろうか――という気持ちが、
静かに、しかし確実に襲ってきたのだ。
⽗は、私に地上の話を聞かせてくれた。
⾃分の夢や、守りたいものの話をしてくれた。
地上を奪還して、いつか太陽の下で暮らす。
⽗が、叶えられなかった夢を、私は引き継がなくてはならない――
⾃然と握りしめた⼿に⼒が⼊り、胸の奥が熱くなる。
涙はまだ出なかったけれど、⼼の奥底で、何かが決意に変わった。
「……お⽗さん、私が……受け継ぐよ。」
その⼀⾔が、凛とした空気の中で⼩さく響いた。
まだ弱い、未熟な私だけれど、⽗の遺志を背負って、
歩き出さなければ ならない――そう、⼼の底から思った。



