空を知らない君に贈る唄


* * *

けれど、私が⼗三になった年の冬。

地上から帰ってきた上進隊の中に

……………………………………………⽗の姿はなかった。

胸の奥が、⾔葉にできないまま凍りつくようだった。

――享年41歳。

まだまだこれからという年齢だった。

あとから聞いた話だが、⽗が率いていた班は任務中、運悪く異喰の 群れに襲われたらしい。

そこで、班員たちを逃がすため、⽗は⼀⼈でしんがりを務め、異喰に特攻したのだそうだ。

「…お…⽗、さん……」

⾔葉にならない呟きが、部屋の静けさに吸い込まれる。

死体はすべて⾷べ尽くされてしまったらしく、⼿元に戻ってきたのは

ほんの⼀⽋⽚の⾻だけ。

⼩さな⾻⽚を握り締めたとき、現実だとわかっていても、

夢の中にいるかのような錯覚に襲われた。

⽗が率いた班の班員だったという男は、私の前で泣き崩れ、

何度も何度も許しを請うていた。

「……すまない……俺たちを守るために……」

その声を聞きながら、私の胸の奥で何かが壊れた。

涙は出なかった。

ただ、冷たい空気の中で、⽗の不在だけが重くのしかかってきた。

あの⽇から、地上の話を聞くたびに⽗の笑顔が脳裏をよぎり、

胸の奥にぽっかりと⽳が空いてしまったような感覚が続いた。

だが、それから丸⼀年が経過した、⽗の命⽇。

朝の光はいつもと変わらず差し込んでいたはずなのに、胸の中がざわついていた。

ふと、このままでいいのだろうか――という気持ちが、

静かに、しかし確実に襲ってきたのだ。

⽗は、私に地上の話を聞かせてくれた。

⾃分の夢や、守りたいものの話をしてくれた。

地上を奪還して、いつか太陽の下で暮らす。

⽗が、叶えられなかった夢を、私は引き継がなくてはならない――

⾃然と握りしめた⼿に⼒が⼊り、胸の奥が熱くなる。

涙はまだ出なかったけれど、⼼の奥底で、何かが決意に変わった。

「……お⽗さん、私が……受け継ぐよ。」

その⼀⾔が、凛とした空気の中で⼩さく響いた。

まだ弱い、未熟な私だけれど、⽗の遺志を背負って、

歩き出さなければ ならない――そう、⼼の底から思った。