空を知らない君に送る唄


それだけ。

感情のこもらない、短い返事。

凛は⽴ち上がると、⽑布にも触れず、そのまま踵を返した。

階段へ向かう背中は、いつもより、ほんの少しだけ⼩さく⾒えた。

⼆階へと消えていく⾜⾳を、澄華は動けないまま聞いていた。

リビングに残されたのは、冷たい空気と、静寂。

そして、ソファに落ちていた――凛の涙の痕だけ。

澄華は、ぎゅっと⽑布を握りしめる。

(……夢……?)

どんな夢を、⾒ていたのだろう。

それを聞く資格は、⾃分にはない。

それでも。

胸の奥に、重たいものが沈んだまま、動かなかった。

澄華は結局、⽔も飲まずに⽑布を元の場所へ戻し、静かに⼆階へ戻った。

ベッドに横になっても、⽬は冴えたまま。

閉じた瞼の裏に、あの涙が、何度も浮かんで消えた。