空を知らない君に送る唄


眉は苦しげに寄せられ、唇は微かに震え、

そして――

頬を、⼀筋の涙が伝っていた。

「……っ」

息を、飲む。

⾒てはいけないものを⾒てしまった気がした。

悲しげで、

苦しげで、

まるで何かに縋ることも出来ず、ただ耐えているような顔。

呼吸が、不規則に浅く速い。

まるで、逃げ場のない場所に追い詰められているみたいだ。

――強い⼈間の顔じゃない。

その認識が、澄華の胸を、ちくりと刺した。

考えるより先に、⾝体が動いていた。

「……班⻑……!」

凛の肩に⼿をかけ、揺さぶる。

「……氷室、班⻑……!」

その瞬間。

ビクッ、と凛の⾝体が⼤きく跳ねた。

「――っ!!」

ガバッ、と勢いよく上体を起こす。

荒い呼吸。

⾒開かれた⽬。

周囲を警戒するように彷徨う視線。

完全に、戦闘時のそれだった。

数秒。

やがて、ここが戦場ではなく、宿舎のリビングだと理解したのか。

凛は、深く息を吐いた。

「……っ……」

肩が、ゆるゆると落ちる。

呼吸が、少しずつ落ち着いていく。

その⼀連を、澄華はただ、呆然と⾒つめていた。

「……だ、⼤丈夫……ですか?」

ようやく絞り出した声は、思ったよりも⼩さく、震えていた。

その声で、凛は初めて澄華の存在に気づいたようだった。

「……」

⼀瞬、驚いたように⽬を⾒開く。

だが、すぐに視線を逸らし、掠れた声で――

「……ああ。」