空を知らない君に送る唄


***

夜中、喉の奥にひりつくような乾きを覚えて、澄華は⽬を覚ました。

時計を⾒るまでもなく、深夜だと分かる静けさ。

宿舎全体が、眠りに沈んでいる。

ベッドから抜け出し、⾳を⽴てないようにドアを開ける。

⼆階の廊下は薄暗く、⾜⾳がやけに響く気がして、⾃然と歩幅が⼩さくなった。

階段を降りると、ひんやりとした空気が肌を撫でる。

(寒……)

春先とはいえ、夜はまだ冷え込む。

キッチンへ向かおうとしたその途中、リビングに⽬をやった。

ソファ。

そこに、凛がいた。

背もたれにもたれかかるように、無防備な姿勢で眠っている。

隊服の上着も脱がず、腰のホルスターも付けたまま。

当然、⽑布などは何もかけていなかった。

「……」

思わず、眉をひそめる。

(あれだけ強いのに……⾃⼰管理はなってないんだ)

そう思いながらも、視線は⾃然と部屋の隅に置かれた⽑布へ向かった。

⾵邪をひかれては困る。

それだけの理由だった。

……はずだ。

澄華は静かに⽑布を⼿に取り、凛の前に回り込む。

その瞬間。

――動きが、⽌まった。

⽬に写ったのは凛の顔。

先程までは、険しく、冷たく、他者を寄せ付けない表情だった。

けれど今は、先程までのそれとはまるで違っていた。