空を知らない君に送る唄


そのとき。

――コン、コン。

控えめなノック⾳がした。

澄華は少し眉を寄せてから、上体を起こした。

「……なに。」

ドアの向こうから、陽⽃の声。

「起きてる?」

「……うん。」

少し間があって。

「……あのさ、」

声が、昼間よりずっと⼩さい。

「……今⽇」

澄華は、ベッドの端に座り直した。

「……負けたのめっちゃ悔しかった。」

⼀拍。

「……でも、ちょっと……楽しかった。」

ドア越しでも分かる、複雑な声⾊。

澄華は、少しだけ⽬を伏せて。

「……うん。」

短く、そう返した。

ドアの向こうで、陽⽃が⼩さく笑った気配がした。

「……明⽇も、訓練しよーぜ。」

「……毎⽇、でしょ。」

「はは……厳しいなぁ。」

でも、その声は、どこか嬉しそうだった。

⾜⾳が、遠ざかっていく。

澄華は再びベッドに横になった。

⽬を閉じる。

⾝体は限界まで疲れているはずなのに。

――眠れない。

それでも。

(……⼀⼈じゃない)

その事実だけが、胸の奥を、ほんのりと温めていた。