空を知らない君に贈る唄

――⽗の話は、いつも私の⼩さな世界を広げてくれた。

「地上はな、空気も⾵も⽔も、全部ここと違うんだ。

匂いも温度も、全部が⽣きてる」

⽗は上進隊の隊員で、任務で家を空けることがほとんどだった。

⽗と⼀緒に過ごせる時間はいつも短かったけれど、

その分、⼀⾔⼀⾔が 胸に刻まれるようだった。

地上の話を聞くと、私の頭の中に⾒たことのない景⾊が広がった。

⺟は膵臓がんで、私がまだ幼い頃に亡くなった。

物⼼がつく前だったので、うっすらとしか覚えていない。

病院の⽩い壁、⺟のやわらかい⼿、淡い笑顔……。

それだけが、私の⼼に残る⺟の記憶だ。

⽗がいない間は、街の⼈たちが私の⾯倒を⾒てくれた。

優しい⼈もいれば少し怖い⼈もいたけれど、皆、私を守ろうとしてくれていた。

だけど、やっぱり家の空気は⽗が帰ってきて初めて満たされるような 気がした。

「澄華、お前もいつか、地上を⾃分の⽬で⾒てみろ」

⽗はそう⾔って、私の肩を軽く叩いた。

父がしてくれる地上の話は、絵本に出てくる架空の夢物語のようで、

⼿の届かないもののように思えた。

でも、いつだって私の⼼にあるのは地上への強い興味だった。

地上はどこまで続いているんだろう?

太陽って、どんな形なんだろう?本当に温かいのかな?

綿菓⼦が空に浮かんでるって⾔ってたけど、⾷べられるのかな?

――私も、上進隊に⼊って外を⾒てみたい!

⽇を追うごとに強くなる気持ち。

いつしか私は、⽗の背中を追うように、上進隊に強い憧れを抱くようになった。