しばらくして、凛はふっと息を吐いた。
「……まぁ」
⼆⼈の視線が、⾃然と凛に集まる。
「初⽇にしては、悪くねぇ。」
短い⼀⾔。
だが、それは凛なりの、最⼤限の肯定だった。
「今⽇のところはここまでだ。帰るぞ。」
背を向け、歩き出す。
その背中は、相変わらず⼤きくて、遠い。
澄華は、ゆっくりと上体を起こした。
⾝体中が痛い。
それでも。
(……負けたのに……)
胸の奥が、熱い。
悔しさと、恐怖と、そして――
ほんの少しの、希望。
隣で、陽⽃が苦笑した。
「……なぁ澄華。」
「……なに。」
「俺さ、」
⼀拍置いて。
「……死にたくねぇな、って思っちまった。」
澄華は、⼀瞬だけ⽬を伏せて、⼩さく頷いた。
「……私も。」
その⾔葉を、凛は振り返らずに聞いていた。
――聞こえないふりをして。

