空を知らない君に送る唄

だが。

凛は、それを避けた。

紙⼀重。

僅かに、⾐擦れの⾳がしただけ。

(……かすった……!)

確かに当たった感触はあった。

だが、凛の体勢は微塵も崩れていない。

地⾯に根を張ったかのように、揺らがない。

「……遅ぇぞ。」

低く、楽しげな声。

次の瞬間。

視界から、凛が消えた。

「――っ!」

どこだ。

どこから来る?

背後か、横か、上か。

予測が追いつかない。

空気が裂ける⾳。

反射的に⾝体を捻る。

――間⼀髪。

拳が、頬のすぐ横を掠めて通り過ぎた。

⾵圧だけで、⽪膚が痺れる。

(……速すぎる……!)

再び距離を詰めようと踏み出すが、

その瞬間にはもう、凛は別の位置にいる。

視界が、追えない。

(予測……できない……!)

頭では理解しているのに、⾝体がついてこない。

完全に“遊ばれている”。

「……いい連携だ。」

不意に、凛が⾔った。

背後から。

⼼臓が跳ねる。

「だが――」

次の瞬間、肩を掴まれる。

指が、鉄のように⾷い込む。

「やっぱり⽢ぇな。」

世界が、再び回転した。