空を知らない君に送る唄


「っぶねぇ!!」

切⽻詰まった声。

次の瞬間、背中に回された腕が、澄華の⾝体を強引に引き寄せた。

衝撃が殺され、視界が⽌まる。

地⾯に叩きつけられる――はずだった⾝体は、誰かの腕の中でかろうじて踏みとどまっていた。

「……っ、は……」

息を荒げながら、澄華はゆっくりと顔を上げる。

そこにいたのは――

「あれ、ほんとに丸腰だよなぁ……!?」

苦笑混じりの声。

「素の⾝体能⼒があれかよ……正気じゃねぇ……」

澄華を⽀えながら、前を睨み据えている――佐倉陽⽃だった。

「……っ!?」

驚愕に、⾔葉を失う。

凛の速度を⾒て、

“判断して”

“動いて”

“間に合わせた”。

そのすべてを、この⼀瞬でやってのけたという事実。 ――適応していなければ、不可能だ。

澄華の視線に気づいたのか、陽⽃はちらりとこちらを⾒て、少しだけ 眉を下げた。

「悪ぃ……今の、ちょっと無理やりだった。どっか痛ぇとこあるか?」

「……だ、⼤丈夫……」

そう答えながらも、胸の⿎動がうるさいほど響いている。

(……陽⽃、今……)

凛を、⾒切った。

数メートル先の凛は、ゆっくりと姿勢を正し、⼆⼈を⾒下ろしていた。

相変わらずの不敵な笑み。

だが――

その⽬は、先ほどとはわずかに違っていた。

値踏みする視線から、観察する視線へ。