澄華はその⾔葉に、わずかに⽬を細めた。
胸の奥が、ひりつくように熱くなる。 ――来た。
そう思った。
凛がただの冷たい上官ではないことを、無意識のどこかで期待していた
⾃分に気づく。
⼀⽅、陽⽃はというと。
「……じ、実⼒って……え!?」
完全にパニックになりながらも、慌てて⾃分の装備に⼿を伸ばす。
その様⼦を⾒て、凛は⿐で⼩さく笑った。
「安⼼しろ、殺しはしねぇ。」
その⼀⾔で、安⼼できないのが上進隊という組織だ。
⽞関の扉が開く。
地下特有の、ひんやりと湿った空気が流れ込んできた。
三⼈分の⾜⾳が重なり、宿舎の外へと踏み出す。 ――こうして、⼀班は本当の意味で動き出した。
まだ互いの⼒量も、信頼も知らないまま。
だが確実に、同じ“死地”へ向かう班として。
***
凛を追って辿り着いたのは、地下都市の外縁に近い、広々とした空き地だった。
⼈⼯照明の光が届く範囲を少し外れると、そこから先は鬱蒼とした⽊々が壁のように⽴ち並び、
⾵に揺れる葉擦れの⾳だけが低く響いている。
地⾯は踏み固められているものの、ところどころに⼩⽯や根が露出して
おり、訓練⽤に整備された場所ではないことが⼀⽬で分かった。 ――地上を想定した、実戦に近い環境。
先を歩いていた凛が、不意に⾜を⽌める。
数歩遅れて、澄華と陽⽃も⽴ち⽌まった。
呼吸がまだ完全には整っていない。
肺の奥がじんわりと熱を持っている。
凛はゆっくりと振り返った。
その動きには⼀切の隙がなく、視線は⼆⼈を値踏みするように
冷たくなぞる。
次の瞬間。
カチリ、と乾いた⾳がして、凛は腰のホルスターから錐⼑を抜いた。
迷いのない動作で、それを近くの地⾯へと投げ捨てる。
⾦属が⼟に当たり、鈍い⾳を⽴てて転がった。
「……?」
⼆⼈は同時に、その光景を困惑した表情で⾒つめた。
どういう意図なのか、理解が追いつかない。
凛は、完全に武器を失った状態で、ゆっくりと両⼿を広げた。
まるで降参のポーズのようにも⾒える。

