空を知らない君に送る唄


その背後で、低い⾳がした。

凛が、⽚⼿に持っていたマグカップをぐいっと傾け、残っていた

コーヒーを⼀息で飲み⼲したのだ。

カップをテーブルに置くと、無⾔で⽴ち上がり、⽞関に置きっぱなしに

なっていた⾃分の装備の前に⽴つ。

ガチャリ。

⾦属が触れ合う硬い⾳が、静かなリビングに響く。

ホルスターを腰に巻き付け、装置を背⾯に固定する。

その動きは無駄がなく、洗練されていた。

まるで体の⼀部であるかのように、装備が⾃然に収まっていく。

「あ、え、ちょ、ちょっと班⻑!?」

完全に置いていかれた形の陽⽃が、慌てて声を上げる。

凛はその声に動きを⽌め、ゆっくりと顔を上げた。

鋭く、冷えた視線が陽⽃を射抜く。

「……」

⼀瞬で空気が張り詰める。

陽⽃は思わず息を詰め、背筋が強張るのを感じた。

凛は⼩さく、しかしはっきりとため息をつき、低い声で⾔い放つ。

「ちょうどいい機会だ。」

装備を最後に固定しながら、視線を澄華、そして陽⽃へと移す。

「お前らの実⼒を、⾒定めてやる。」

その⾔葉は、脅しでも冗談でもなかった。

班⻑としての判断であり、命を預け合うための、避けては通れない

通過儀礼。