【海來、綴さまって知ってる?】
ある日、親友の麗から届いたメッセージ。
なんでも、綴さまに手紙を送ると、願いが叶うという噂だ。
馬鹿馬鹿しい。その時私は、そう思って切り捨てた。
「海來、俺、麗と付き合う事にしたから」
「え、ねえ誠司、そんな急に――」
「お前じゃ退屈なんだよ。じゃあな」
縋る私を切り捨てた誠司。
不満だけが残り、私は立ち尽くした。
次の日、麗が私に話しかけた。
「誠司くんを奪ってごめんね?」
その余裕そうな表情が嫌で、シカトした。
麗は、憐れむような顔をした。
下校中、コンビニに寄って葉書を買った。
家に帰って、綴さまの住所を葉書に書き写す。
裏面には、『誠司と麗に別れて欲しい』と、丁寧に書き入れた。
その三日後、ある噂が届いた。
その内容はなんと、『誠司が麗と別れた』というもの。
「やったあ……」
思わずにやけた。
『誠司と復縁したい』
『誕プレが欲しい』……
その後も私は、綴さまに願い事をした。
そして、六枚目の葉書を投函する。
「お願いします……!」
「――あれ、海來ちゃん……?」
耳に残った声。咄嗟に振り返ると、そこには麗の姿。
「それってもしかして、綴さま宛の葉書?」
「……」
「だったらやめた方がいいよ、だって――」
「煩い!!麗みたいに、したい事を一人で実現できる人とは、私は違うの!!」
だって私は、綴さまがいないと、誠司と一緒にいられない……。
「っ、そっか……海來、綴さまに気をつけてね……」
そう言い残した麗を、私は静かに見送った。
「気をつけてって、どういう事……」
私はSNSで検索をかける。
数秒して、結果がずらりと並んだ。
そこにあったのは
【綴さまに七回以上願い事をすると、乗っ取られる】
という言葉。
「どういうこと、……」
私は思わず呟いた。
乗っ取られるなんてあり得ないはずだけど、綴さまなら……。
今までの出来事を思い出し、当分は願い事を控えようと、葉書をしまった。
「ああ海來、俺、当分お前と帰らないから」
「部活が忙しいの?」
「違うし。てか、お前に理由なんて言う必要なくない?」
冷酷な誠司の台詞。
私は、シャーペンを握りしめた。


