【咲、綴さまって知ってる?】
親友の麗からだ。なんでも、綴さまに手紙を送ると願いが叶うらしい。
馬鹿馬鹿しい。私は、そう切り捨てた。
「咲、俺、お前と別れて麗と付き合う事にしたから」
言い去った颯。私は立ち尽くした。
次の日、麗が私に話しかけた。
「颯くんを奪ってごめんね?」
思わず、シカトした。麗は、憐れむような顔をした。
下校時、コンビニに寄って葉書を買った。
家に帰って綴さまの住所を調べた後、丁寧に写す。裏面には、
『颯と麗に別れて欲しい』
と、書き込んだ。
その三日後、『颯が麗と別れた』という噂が届いた。
「噂は本当だったんだ……」
私は、思わずにやけた。
『颯と復縁したい』『誕プレが欲しい』……
その後も私は、綴さまに願い事をする。そして、葉書を投函した。
「お願いします……!」
「――あれ、咲ちゃん……?」
耳に残った声。振り返ると、そこには麗の姿。
「それってもしかして、綴さま宛の葉書?」
「……」
「だったらやめた方がいいよ、だって――」
「煩い!麗みたいに、したい事を一人で実現できる人とは、私は違うの!」
だって私は、綴さまがいないと、颯と一緒にいられない……。
私は咄嗟に、麗に怒鳴った。
「……私、咲を見損なったわ」
そう言った麗を、私は静かに見送った。
あの冷めた瞳が忘れられない。
どこか痛む胸のせいで、当分は願い事を控えようと葉書をしまった。



