目が覚めると、視界は真っ白だった。
鼻をつく消毒液の匂い。規則正しく響く電子音。
……ああ、またここか。
「……陽茉梨」
すぐ横から、掠れた声がした。
ゆっくりと首を動かすと、パイプ椅子に座り、私の手を握りしめたままの蒼汰がいた。
その目は真っ赤に充血していて、いつもの余裕なんて微塵もなかった。
「……見ないで」
私は反射的に手を引き抜こうとしたけれど、蒼汰の力は驚くほど強かった。
昨日までの「大嫌い」という言葉が、今のこの状況では何の役にも立たない。
「……何で言わなかったんだよ。半年なんて、嘘だろ?」
「……嘘じゃないよ。全部、本当」
私は天井を見つめたまま、感情を殺して答えた。
バレてしまった絶望感と、どこかでホッとしてしまった自分。その両方が胸をかき乱す。
「あんたには関係ないって言ったじゃん。……同情なんていらない。憐れみの目で私を見ないで!」
「同情なんかじゃねえよ!」
蒼汰が立ち上がり、私の言葉を遮った。
机を叩く大きな音が、静かな個室に響き渡る。
「俺が、どれだけお前のこと……っ。お前がどんなに酷いこと言っても、俺を遠ざけても、俺はずっとお前の隣にいたかったんだよ!」
「……無理だよ。私はもう、隣にいられない」
「いられる。俺がいるって決めたんだ。お前がどんなに意地を張っても、死ぬまで離さない」
蒼汰の瞳から、一筋の涙がこぼれて私の甲に落ちた。
熱い。その涙が、私の頑なな心を溶かしていくようで怖かった。
「……蒼汰。私、もうひまわりみたいに笑えないよ。……ボロボロになって、醜くなって……死ぬのが、怖いんだよ」
ずっと胸の奥に閉じ込めていた、本当の言葉。
意地っ張りな仮面が剥がれ落ち、私は子供のように泣きじゃくった。
蒼汰は何も言わず、ただ私の痩せた体を壊れそうなものを扱うように、優しく抱きしめた。
彼の体温が、止まっていた私の時間を動かしていく。
「……お前が笑えなくても、俺が笑わせる。お前が歩けなくなったら、俺が背負う。……だから、一人で勝手に終わらせるな」
窓の外では、季節外れの雨が降り始めていた。
私たちの「嘘」は終わった。でも、それは残酷な現実との戦いの始まりでもあった。
鼻をつく消毒液の匂い。規則正しく響く電子音。
……ああ、またここか。
「……陽茉梨」
すぐ横から、掠れた声がした。
ゆっくりと首を動かすと、パイプ椅子に座り、私の手を握りしめたままの蒼汰がいた。
その目は真っ赤に充血していて、いつもの余裕なんて微塵もなかった。
「……見ないで」
私は反射的に手を引き抜こうとしたけれど、蒼汰の力は驚くほど強かった。
昨日までの「大嫌い」という言葉が、今のこの状況では何の役にも立たない。
「……何で言わなかったんだよ。半年なんて、嘘だろ?」
「……嘘じゃないよ。全部、本当」
私は天井を見つめたまま、感情を殺して答えた。
バレてしまった絶望感と、どこかでホッとしてしまった自分。その両方が胸をかき乱す。
「あんたには関係ないって言ったじゃん。……同情なんていらない。憐れみの目で私を見ないで!」
「同情なんかじゃねえよ!」
蒼汰が立ち上がり、私の言葉を遮った。
机を叩く大きな音が、静かな個室に響き渡る。
「俺が、どれだけお前のこと……っ。お前がどんなに酷いこと言っても、俺を遠ざけても、俺はずっとお前の隣にいたかったんだよ!」
「……無理だよ。私はもう、隣にいられない」
「いられる。俺がいるって決めたんだ。お前がどんなに意地を張っても、死ぬまで離さない」
蒼汰の瞳から、一筋の涙がこぼれて私の甲に落ちた。
熱い。その涙が、私の頑なな心を溶かしていくようで怖かった。
「……蒼汰。私、もうひまわりみたいに笑えないよ。……ボロボロになって、醜くなって……死ぬのが、怖いんだよ」
ずっと胸の奥に閉じ込めていた、本当の言葉。
意地っ張りな仮面が剥がれ落ち、私は子供のように泣きじゃくった。
蒼汰は何も言わず、ただ私の痩せた体を壊れそうなものを扱うように、優しく抱きしめた。
彼の体温が、止まっていた私の時間を動かしていく。
「……お前が笑えなくても、俺が笑わせる。お前が歩けなくなったら、俺が背負う。……だから、一人で勝手に終わらせるな」
窓の外では、季節外れの雨が降り始めていた。
私たちの「嘘」は終わった。でも、それは残酷な現実との戦いの始まりでもあった。


