蒼太の手が私の腕に触れそうになって、私は反射的にそれを振り払った。
「触らないで!……本当に、迷惑なの」
言い放った自分の声が、震えているのがわかった。
蒼太は一瞬、悲しそうな顔をしたけれど、すぐにいつもの調子で「……わかったよ。じゃあな」と短く言って、教室を出て行った。
一人になった放課後の教室で、私は崩れるように椅子に座り込む。
窓から見える空は、泣きたくなるほど綺麗な茜色だった。
「……ばか。私のばか」
誰もいない教室に、私の小さな独り言が消えていく。
カバンの中に隠した、白い薬の袋がやけに重く感じた。
私の寿命は、あと半年。
意地っ張りな私の、命がけの嘘が始まった。


