「……ちょっと、二人とも! 顔赤すぎじゃない?」
昼休みの教室。親友の菜緒が、ニヤニヤしながら私と蒼汰の席を交互に指差した。
私は慌てて、開いていた教科書で顔を隠す。
「な、何のこと? 別に普通だよ!」
「嘘おっしゃい! 今朝、昇降口で手繋いでるの、バッチリ見られてるんだからね?」
その瞬間、クラスのあちこちから「えー!」「マジで!?」「あの鉄壁の幼馴染がついに!?」という野次馬の声が上がった。
私の心臓は、もう爆発寸前だ。
「……蒼汰、何とか言ってよ!」
助けを求めて隣の席の蒼汰を見ると、彼は彼で、耳の先まで真っ赤にしてそっぽを向いていた。いつもはクールな彼が、ペンを回す手がぎこちない。
「……うっせーな。別にいいだろ、俺たちがどうしようが」
「ひゅ〜! 蒼汰、独占欲全開じゃん!」
男子たちが蒼汰の肩を叩いて冷やかす。
「……陽茉梨、こっち見んな。……恥ずい」
「……私だって恥ずかしいよ!」
お互いに顔を見合わせることもできず、ただ机を見つめる二人。
でも、机の下。
誰も見ていないところで、蒼汰の足が私の足に、ツンと軽く触れた。
(……え?)
びっくりして彼を見ると、彼は相変わらずそっぽを向いたまま。でも、その表情は少しだけ、誇らしげで、嬉しそうだった。
「……放課後、アイス。お前の好きなやつ、奢ってやるから。……だから、そんな顔すんな」
「……っ、……ずるい」
そんなの、余計に顔が赤くなっちゃうじゃん。
周囲の冷やかしも、茶化す声も、全部「幸せなBGM」に聞こえてくる。
「ねえ、陽茉梨。幸せすぎて、倒れないでよ?」
菜緒が耳元でささやく。
「……もう、倒れそうだよ」
心の中でそう答えた。
病気の予兆なんて、今はどこか遠い国の出来事みたいだ。
クラスのみんなに祝福されて、大好きな人の「特別」になれた。
この照れくさくて、くすぐったい時間は、私が今まで「意地」を張って手放してきた、最高の宝物だった。
「……蒼汰。放課後、楽しみにしてるね」
「……おう。遅れんなよ」
教科書の陰で、こっそりと小指だけを絡め合う。
誰にも見えない、でも二人だけには確かに伝わる熱。
私たちの恋は、世界で一番甘くて、世界で一番不器用な「初恋」の形をしていた。
昼休みの教室。親友の菜緒が、ニヤニヤしながら私と蒼汰の席を交互に指差した。
私は慌てて、開いていた教科書で顔を隠す。
「な、何のこと? 別に普通だよ!」
「嘘おっしゃい! 今朝、昇降口で手繋いでるの、バッチリ見られてるんだからね?」
その瞬間、クラスのあちこちから「えー!」「マジで!?」「あの鉄壁の幼馴染がついに!?」という野次馬の声が上がった。
私の心臓は、もう爆発寸前だ。
「……蒼汰、何とか言ってよ!」
助けを求めて隣の席の蒼汰を見ると、彼は彼で、耳の先まで真っ赤にしてそっぽを向いていた。いつもはクールな彼が、ペンを回す手がぎこちない。
「……うっせーな。別にいいだろ、俺たちがどうしようが」
「ひゅ〜! 蒼汰、独占欲全開じゃん!」
男子たちが蒼汰の肩を叩いて冷やかす。
「……陽茉梨、こっち見んな。……恥ずい」
「……私だって恥ずかしいよ!」
お互いに顔を見合わせることもできず、ただ机を見つめる二人。
でも、机の下。
誰も見ていないところで、蒼汰の足が私の足に、ツンと軽く触れた。
(……え?)
びっくりして彼を見ると、彼は相変わらずそっぽを向いたまま。でも、その表情は少しだけ、誇らしげで、嬉しそうだった。
「……放課後、アイス。お前の好きなやつ、奢ってやるから。……だから、そんな顔すんな」
「……っ、……ずるい」
そんなの、余計に顔が赤くなっちゃうじゃん。
周囲の冷やかしも、茶化す声も、全部「幸せなBGM」に聞こえてくる。
「ねえ、陽茉梨。幸せすぎて、倒れないでよ?」
菜緒が耳元でささやく。
「……もう、倒れそうだよ」
心の中でそう答えた。
病気の予兆なんて、今はどこか遠い国の出来事みたいだ。
クラスのみんなに祝福されて、大好きな人の「特別」になれた。
この照れくさくて、くすぐったい時間は、私が今まで「意地」を張って手放してきた、最高の宝物だった。
「……蒼汰。放課後、楽しみにしてるね」
「……おう。遅れんなよ」
教科書の陰で、こっそりと小指だけを絡め合う。
誰にも見えない、でも二人だけには確かに伝わる熱。
私たちの恋は、世界で一番甘くて、世界で一番不器用な「初恋」の形をしていた。


