昨日の部室での告白。
夢じゃなかったんだ……。
朝、鏡の前で自分の頬をつねってみる。真っ赤になった顔を見て、また心臓がうるさく跳ねた。
(「彼女」……私が、蒼汰の彼女……)
指定のジャージを羽織り、カバンにひまわりのキーホルダーを付け直す。
校門の前で待っているはずの彼を思うだけで、足取りが軽くなる。最近の体調の悪さなんて、どこかへ吹き飛んでしまったみたいだ。
「……あ、陽茉梨」
校門の銀杏の木の下。
自転車にもたれかかってスマホをいじっていた蒼汰が、私を見つけて顔を上げた。
目が合った瞬間、彼も少しだけ耳を赤くして、視線を逸らす。
「……おはよ」
「……うん。おはよ、蒼汰」
いつも通りの挨拶。なのに、空気の温度が昨日までとは全然違う。
並んで歩き出すと、手が当たるか当たらないかの距離が、昨日よりもずっと意識されて、指先がピリピリする。
「……これ。昨日の雨、風邪引かなかったか?」
蒼汰が差し出したのは、温かいイチゴミルクのボトル。
「あ、ありがとう。……大丈夫だよ、蒼汰のジャージがあったから」
「……そっか。なら、いいけど」
沈黙。
でも、気まずい沈黙じゃない。お互いの「好き」が溢れ出しそうで、言葉が見つからないだけの、甘い沈黙。
昇降口で靴を履き替えようとしたとき、蒼汰が周りに誰もいないのを確認して、私の袖をクイッと引いた。
「陽茉梨」
「……なに?」
「……手、繋いでもいい?」
直球すぎる問いかけに、私の心臓は限界を突破した。
「……っ、……学校だよ? 誰かに見られたら……」
「いいよ、見られても。……俺の彼女だって、自慢したいし」
そう言って、蒼汰は私の不自由になりかけている右手を、迷わずに包み込んだ。
大きな、節くれだった、温かい手。
指を絡める「恋人繋ぎ」をされた瞬間、私の全身に彼の熱が流れ込んでくる。
(……ああ。私、生きてる。蒼汰の隣で、生きてるんだ)
教室までの短い廊下。
私たちは、一言も喋らずに、ただ繋いだ手の感覚だけを確かめ合った。
廊下の窓から差し込む朝日は、昨日よりもずっと眩しくて。
「……放課後、また屋上な」
「……うん。待ってるね、蒼汰」
離したくない手を、名残惜しそうに離す。
これから始まる、二人だけの「特別な毎日」。
病気というタイムリミットがあるからこそ、この一分一秒が、ダイヤモンドよりも輝いて見えた。
夢じゃなかったんだ……。
朝、鏡の前で自分の頬をつねってみる。真っ赤になった顔を見て、また心臓がうるさく跳ねた。
(「彼女」……私が、蒼汰の彼女……)
指定のジャージを羽織り、カバンにひまわりのキーホルダーを付け直す。
校門の前で待っているはずの彼を思うだけで、足取りが軽くなる。最近の体調の悪さなんて、どこかへ吹き飛んでしまったみたいだ。
「……あ、陽茉梨」
校門の銀杏の木の下。
自転車にもたれかかってスマホをいじっていた蒼汰が、私を見つけて顔を上げた。
目が合った瞬間、彼も少しだけ耳を赤くして、視線を逸らす。
「……おはよ」
「……うん。おはよ、蒼汰」
いつも通りの挨拶。なのに、空気の温度が昨日までとは全然違う。
並んで歩き出すと、手が当たるか当たらないかの距離が、昨日よりもずっと意識されて、指先がピリピリする。
「……これ。昨日の雨、風邪引かなかったか?」
蒼汰が差し出したのは、温かいイチゴミルクのボトル。
「あ、ありがとう。……大丈夫だよ、蒼汰のジャージがあったから」
「……そっか。なら、いいけど」
沈黙。
でも、気まずい沈黙じゃない。お互いの「好き」が溢れ出しそうで、言葉が見つからないだけの、甘い沈黙。
昇降口で靴を履き替えようとしたとき、蒼汰が周りに誰もいないのを確認して、私の袖をクイッと引いた。
「陽茉梨」
「……なに?」
「……手、繋いでもいい?」
直球すぎる問いかけに、私の心臓は限界を突破した。
「……っ、……学校だよ? 誰かに見られたら……」
「いいよ、見られても。……俺の彼女だって、自慢したいし」
そう言って、蒼汰は私の不自由になりかけている右手を、迷わずに包み込んだ。
大きな、節くれだった、温かい手。
指を絡める「恋人繋ぎ」をされた瞬間、私の全身に彼の熱が流れ込んでくる。
(……ああ。私、生きてる。蒼汰の隣で、生きてるんだ)
教室までの短い廊下。
私たちは、一言も喋らずに、ただ繋いだ手の感覚だけを確かめ合った。
廊下の窓から差し込む朝日は、昨日よりもずっと眩しくて。
「……放課後、また屋上な」
「……うん。待ってるね、蒼汰」
離したくない手を、名残惜しそうに離す。
これから始まる、二人だけの「特別な毎日」。
病気というタイムリミットがあるからこそ、この一分一秒が、ダイヤモンドよりも輝いて見えた。


