勝手に応募されたけど、センターは私がもらいます

会場の空気は、黒川悠牙のステージの余韻でまだざわついていた。

スタッフの声が響く。

「そして――最後の参加者、白雪姫乃です」

姫乃はゆっくり立ち上がる。
長い黒髪を軽く揺らしながら、ステージへ向かう足取りは落ち着いていた。

他の参加者は
「あの黒川悠牙の後って可哀想…」
「あの子超絶美少女じゃん…あんなビジュアルこの世に存在するんだ」

スポットライトが当たる。
審査員席の五人が視線を集中する。

社長の神宮寺龍弥
振付師の真田玲司
ボーカルトレーナーの水城奏
NEO-STARの天城蓮
NEO-STARの神崎蒼馬

「始めてください」

静かなピアノのイントロ。
姫乃は深呼吸をしてから歌い始める。

透き通る声。
しかし透明感だけではなく、ところどころ強さと芯が感じられる。
表現力が歌声から自然に滲み出す。

サビに入ると、姫乃はゆっくりとステップを踏み、体全体でリズムを表現する。
華やかに見せつつも、過剰ではない。

そして何より――
観客の目線を意識した仕草や笑顔。
黒川悠牙に匹敵するほど、ステージの空気を自分のものにしていた。

曲のクライマックス。
姫乃は大きく息を吸い込み、声を伸ばしながら最後のポーズを決める。
その瞬間、会場全体が息を飲んだ。

静寂――そして一斉の拍手。

審査員席では、まず水城奏がメモを置き、感嘆の声を漏らす。

「…すごい」
「声量、表現力、安定感。全てが完璧に近い」
「他の誰よりも心に届く歌だ」

次に真田玲司。

「ダンスも素晴らしい」
「軸がしっかりしていて、動きに無駄がない」
「曲の表情を完璧に表現している」

天城蓮。

「立っているだけで視線を奪われる」
「ステージを完全に自分のものにしている」
「存在感がすごい…黒川悠牙に匹敵する」

神崎蒼馬も口を開く。

「完成度が高すぎる」
「歌、ダンス、表現力、すべてに隙がない」
「グループに入ったら、確実にエースになる」

そして社長、神宮寺龍弥。
マイクを持ち、姫乃を見つめる目に光が宿る。

「白雪姫乃」

少し間を置く。

「君のステージは――ただの合格点ではない」
「これは観る者の心を揺さぶるパフォーマンスだ」
「声、ダンス、表現力、仕草…すべてが計算され尽くしている」

神宮寺は少し微笑む。

「君を見ていると、オーディションが単なる審査ではなく、ひとつの物語になっていることが分かる」
「これほどステージ全体を自分のものにできる参加者は滅多にいない」
「黒川悠牙に匹敵する力を持っている――いや、負けず劣らずの存在感だ」

姫乃は深く頭を下げる。

「ありがとうございます!」

ステージを降りると、会場の参加者たちは皆、息を呑んでいた。

姫乃の隣に座った陽斗も、少し興奮した顔で言う。

「……すごかった」
「黒川悠牙と同じくらい、いやそれ以上かも」

姫乃は少し照れながらも、心の中でほくそ笑む。

(やっぱり私、負けてない…!)

その瞬間、オーディションの空気は姫乃の圧倒的な存在感で満ち、誰もが彼女の成長と輝きを確信していた。